第64録 命を守る堤(つつみ)は美しく後世に残る景観として
2021年10月号 Vol.575
日本三大の一つと言われる砂丘が静岡に
命を守る堤(つつみ)は美しく後世に残る景観として
静岡・浜松市
▲砂丘の旅に出発、正面が防潮堤です
東日本大震災を受け何をどうするべきか
2011年3月、浜松市ではゆっくりとした振動が長く続きました。それが東日本大震災でした。
翌年、浜松市役所の各部局ではやがて来る南海トラフ地震に備え何をするのかの議論が始まっていました。浜松市の景観を所管する部署の職員が「防潮堤整備は末永く後世に残るもの、コンクリートの壁ではなく景観に配慮した整備が必要」と上申。その後、浜松市は静岡県の防潮堤整備のための検討のうち景観を考える分科会に加わりました。
2012年6月、浜松市内の企業が静岡県に300億円を寄付し、東は天竜川河口から西は浜名湖までの遠州灘17.5キロに渡る防潮堤の整備事業計画の検討が始まりました。
風紋ひろがる砂丘 アカウミガメの産卵地
防潮堤整備エリアには日本三大砂丘の一つと言われる中田島砂丘があります。近年の海浜浸食により規模が小さくなってしまいました。かつてはラクダが飼われ、観光客を乗せて歩いていました。今は、アカウミガメの産卵地として有名で、自然保護団体による産卵場の保全が行われています。また、風が作り出す風紋が砂丘に広がり、美しい景観となっています。
自然、景観を守り市民に愛される施設
防潮堤の整備は2021年3月に本体部分が完成しました。
形は台形、台形の底辺は約50~60メートル、高さは平均15メートルです。台形の芯の部分には土砂とセメントを混ぜた「CSG」と呼ばれる素材を用い、その上に土砂を盛り、その上を30㌢の砂で覆っています。斜面の保護のため、市民による植樹も行われました。
頂上部は幅4メートルほどの遊歩道となっており散策を楽しめます。
中田島砂丘は毎年5月の連休に開催される浜松まつりのなかの凧揚げ合戦でも有名です。百を超える参加町どうしの糸切合戦は勇壮です。防潮堤の斜面にはこの糸切合戦を楽しむための観覧席としての役割もあります。
コロナ禍の後、遠州灘の長大な砂浜に溶け込んだ防潮堤を散策し、浜松まつりで凧揚げ合戦を堪能してください。
見聞録メモ
【浜松まつり会館】
電話053-441-6211
新型コロナの影響で休館の場合もありますので、事前に問い合わせを。
▲砂丘の入口
▲浜松まつり会館。大凧、御殿屋台が展示されています