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〔84〕新鮮な感動が指先から筆に、紙に伝わる

かがやきDAYS2021年11月号 Vol.576

新鮮な感動が指先から筆に、紙に伝わる

山口・リベルタス労組 和泉川(いずみかわ) 優嗣(ゆうじ)さん

▲筆を持つ和泉川墨仙さん

今年3月に組合を結成したばかりのリベルタス興産で、印刷のオペレーターとして働いている和泉川優嗣さんは、会社になくてはならない存在。大企業「宇部興産」が1991年に、障害者の雇用を目的にリベルタス興産を設立した当初から勤務しています。

逆境を乗り越えて

和泉川さんは、3歳児検診で風疹難聴と診断され、以来、親子で悪戦苦闘してきました。小学校の「ことばの教室」に通い、家では毎日聴能訓練。お母さんと一緒に泣きながらがんばりました。山口ろう学校下関分校には、毎朝5時起きで電車・バスを乗り継ぎ、通いました。小学生の間はお母さんと一緒に、中学校では友人のノートを借りて勉強。高校の3年間は皆勤賞でした。卒業後は、8歳から習っている書道を究めようと、岡山と滋賀の書道専門学校で3年間学びます。そしてリベルタス興産への就職につながります。

優秀勤労障害者として知事表彰

職場では多くの仲間が去っていくなか、和泉川さんは勤続30年を迎えました。また、仕事の合間に障害者への地域住民の理解を深めるために、講演会や研修会、手話養成講座などの講師も行ってきました。そんな和泉川さんに朗報! 9月27日、知事表彰の優秀勤労障害者に選ばれました。このことはリベルタス労組にとっても、リベルタス興産職員にとっても誇りであり、励みとなるでしょう。

書道の腕前は十段

和泉川さんは、現在、創玄書道会書道研究玄游会に所属し十段、姓号は和泉川墨仙(ぼくせん)。2018年開催の創玄書道会第54回創玄展では見事、一科入賞。その書は国立新美術館に展示されました。和泉川さんは「ことばが活字では表せないエネルギーを持ち、新鮮な感動が指先から筆に、そして紙に伝わり表現されることは、書ならではの魅力」、「金子みすゞなどの詩のイメージをつかみ、明るく元気よく書く」と言います。

最後に「障害者を見て、無理だと決めないで欲しい。障害者もあきらめないで欲しい。障害者も健常者も対等。みんなと一緒に楽しく仲よく働ける職場にしたい」と和泉川さん。真剣なまなざしで語り、時々目を細めてニコッとし、これまでの苦労や努力が培ってきたであろう落ち着きとやさしさがにじみ出ています。

▲金子みすゞの詩「色紙(いろがみ)」を書きました

▲県内では4人目の表彰