コロナ危機でも明らか 災害・危機への充実した対応には人員増が不可欠
緊急の「豚熱」防疫対策に職員が24時間体制で奮闘 神奈川県職労連
▲豚熱対応を昼夜かけて行う職員。のべ2000人を超える職員が奮闘しました
昨年7月に神奈川県相模原市内で発生した豚熱(ぶたねつ:ウイルス性伝染病)の防疫対策で、県職員が24時間体制で過酷な殺処分作業などに従事しました。職員からは不安と悲痛な声があり、神奈川県職労連は、当局へ緊急要請を行うなど職員の安全と健康を守るために奮闘してきました。
過酷な業務に不安の声 現場の声集め緊急要請
7月8日に豚熱が確認されると、当日からほぼ全庁の職員が応援体制に組み込まれました。
神奈川県職労連の水戸川慶太書記長は「職員はどのような業務かほとんど知らされないまま、24時間3交代1クール14時間勤務で現地へ派遣された。猛暑のなか防護服を着た作業で熱中症となり救急搬送される職員や、殺処分でのメンタル不調を訴える職員もいた」と当時を振り返ります。
神奈川県職労連は、現場から集めた声や、過去に口蹄疫(こうていえき)の発生で県外派遣された職員の経験などを反映させて、当局への要請を重ねました。
勤務体制を8時間45分の5交代制シフトへ変更させ、現場への保健師の配置や、交通費や諸手当の改善を実現しました。「緊急対応とはいえ、職員への配慮が不十分。コロナ対応で疲弊した職場に追い打ちをかけていた」と話しました。
職員の健康守るためマニュアルの改訂実現
その後、現場と職員に混乱が生じたことから、当局に豚熱対応時の検証を行わせ、対応マニュアルの改訂を行わせました。マニュアルには、勤務割り振りの変更による休息時間の確保や、産業医、保健師による健康観察など、職員の健康を守る対策が盛り込まれました。
豚熱対応に従事した組合員からは「あの時、組合がなければ今ごろどうなっていたか」と声が寄せられ、あらためて組合への期待が増しました。
自治体職員が担う災害時・緊急時の対応を円滑にするため、マニュアルなどの整備が重要です。そして、災害時でも住民を守ることができる十分な職員数、組織体制が不可欠です。
「コロナ対応も含め、災害時対応であっても、過労死ラインの業務命令は、組合と職員の同意、保健師や産業医等の健康観察を義務づけるなど、職員のいのちを守る観点から極めて限定的なものにとどめるべき」と水戸川書記長は指摘します。
法令順守と法改正で労働時間上限規制を
神奈川県では、県職員のパワハラ過労自死をきっかけに県庁版「働き方改革」が始まり、時間外勤務の上限規制を条例化しました。しかし、過労死ラインを超える時間外勤務が増えています。
神奈川県職労連は定期的に残業調査を実施し、当局と交渉し、不払い残業の解消をすすめてきました。水戸川書記長は「当局は『緊急対応、災害対応だから』条例違反には当たらないと言う。しかし、過労死ラインを超えた労働時間は職員のいのちの危機に直結する。これでは住民のいのちを守ることはできない」と訴えます。
「人員増とともに労働基準法などの法改正も含めて、抜本的な改善を求める全国的な運動が必要だ。全国の経験と教訓を共有し、職場と運動にいかしたい」と決意を語りました。
▲組合掲示板に長時間労働是正の春闘ポテッカーを貼る水戸川慶太書記長
▲組合ではコロナ対応で長時間奮闘する職場への差し入れなどを行ってきました