シリーズ56 いちから学ぶ仕事と権利[人事院勧告制度]
労働組合と国民が力あわせて賃上げを [人事院勧告制度]
戦後、公務員の労働基本権制約の「代償措置」として始まった人事院勧告制度は、私たちの声を反映する機能を果たしていません。人事院勧告制度の問題点を学び、賃金引き上げのたたかいにいかしましょう。
労働者の賃金を抑制している人勧制度
戦後、公務員労働者の労働運動の高揚に危機感を覚えたGHQと日本政府によって、1948年の国家公務員法、1951年の地方公務員法改正で非現業の争議権ははく奪され、労働基本権の一部に制約が加えられました。そして、制約の「代償措置」として設置されたものが人事院(人事委員会)です。人事院は、毎年民間給与や労働条件の実態を調査(民調:職種別民間給与実態調査)し、「生計費」「民間準拠」をもとに賃金改定などを政府と国会に勧告します。
しかし実際には、「生計費」は軽視され、「民間準拠」のみが強調され、賃金抑制が押しすすめられてきました(図1)。一方で公務員賃金が下がると、公務員準拠とされる民間賃金も下がり、地域経済への影響が大きくなっています。
ケア労働者の賃上げと最賃引き上げ突破口に
この2年間、人事院はコロナ危機のなか奮闘する職員に報いない「一時金引き下げ」を勧告し、基本給を据え置いてきました。一方で政府は経済政策として、〝公務を含む〟「ケア労働者の処遇改善」を打ち出さざるを得ない局面となっています。民間との較差にこだわる人事院勧告制度がもはや機能していないことは明白です。
また、高卒初任給が最賃を下回る自治体も多数ある(図2)など、憲法25条でいう「健康で文化的な生活」すら保障されない状況が続いています。
賃金・労働条件は労使交渉で決定することが原則です。10月から地方交付税措置される「ケア労働者の賃上げ」を確実に実行させ、最低賃金引き上げによる底上げを突破口に、労働者全体の賃金引き上げをすすめることが重要です。