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法改正で長時間過密労働に歯止めを

シンポジウム「職員のいのちと健康を守ろう」

前記事からつづき

▲第2部として行われたシンポジウム

コーディネーター
明治大学・黒田兼一 名誉教授
パネリスト
「全国過労死を考える家族の会」寺西笑子 代表世話人
自治労連・長坂圭造 副中央執行委員長
自治労連事務局弁護団・山口真美(なおみ)弁護士

「過労死ライン」の超過は〝レッドカード〟

黒田兼一 名誉教授

シンポジウムのはじめに、コーディネーターの黒田兼一明治大学名誉教授から、日本における「過労死ライン(月80時間・単月100時間)」がILOなどで議論されている国際的な基準を大きく逸脱していると指摘しました。黒田教授は、「過労死ラインを超えたら、それは〝レッドカード〟です」と述べ、長時間労働問題について、集会のテーマである労働基準法33条との関りを軸に、参加者と一緒に考えていきたいと問題提起をしました。

▲明治大学 黒田兼一 名誉教授

いのちより大事な仕事はない

寺西笑子 代表世話人

「過労死等防止対策推進法」(2014年11月施行)の制定をはじめ、過労死問題に遺族の立場からとりくんできた寺西笑子さん(「全国過労死を考える家族の会」代表世話人)は、2013年にNHKで起きた佐戸未和さんの過労死事件や、自らも夫を亡くされた辛い体験を振り返り、「いのちより大事な仕事はない」と参加者に強調しました。

また、ILOなど国際機関では、研究をふまえて過労死のリスクが高まる時間外労働時間を65時間とする議論がなされていることを紹介し、「全国過労死を考える家族の会」として日本における「過労死ライン」の見直しを求める運動を続けていく思いを語りました。

▲「全国過労死を考える家族の会」 寺西笑子 代表世話人

仲間を働き過ぎで死なせてはならない

長坂圭造 副委員長

寺西さんの発言を受けて、長坂圭造副委員長は、自身も市役所に勤務していた時期に親しくしていた同僚を過労で亡くした体験を語りました。

また、労働組合として過労死遺族の裁判を支援し勝利和解を勝ち取った神奈川県職労連のとりくみが県の過重労働等防止対策などを強化・徹底させることにつながった事例を紹介。神奈川県職労連では、8月に発生した「豚熱」感染への緊急対応の際にも、猛暑と過重労働のなかで働く職員を守るために当局と交渉し、応援体制の充実や交代勤務の強化などを実現させたことを話しました。長坂副委員長は、第一部での各地のとりくみにふれて、「職員のいのちと健康を守るため、労働組合が実態をつかみ、当局や国に必要な施策を求めていくことが大切だ」と訴えました。

▲自治労連 長坂圭造 副中央執行委員長

働く人の視点に立った抜本的な法改正を

山口真美 弁護士

自治労連事務局弁護団で公務災害を担当している山口真美弁護士は、自治体職場で事実上「青天井」に時間外労働を命じることを可能にしている労働基準法33条について、法律家の立場から分析し、その問題点を指摘しました。33条は、公務との関わりでは、1項において災害等「臨時の必要」に応じて労働基準法上の現業職員の、3項において「公務の必要」に応じて一般官公署の時間外労働をそれぞれ可能にしており、それがコロナ禍での緊急対応等にも適用されています。

これに対して山口弁護士は、「33条がコロナ対応のような数カ月から数年単位で続く業務についても時間外労働を正当化する“悪役法”となっている」と批判しました。山口弁護士は、労基法の制定過程なども参照し、本来、労働基準法は労働者保護の視点を基軸とすべきであるが、実際には33条のような使用者の視点に立った例外規定が盛り込まれているとし、「法改正によって歯止めをかけることが必要である」とよびかけました。

▲自治労連事務局弁護団 山口真美 弁護士

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