シリーズ51 いちから学ぶ仕事と権利
定年引き上げを口実にした賃金の引き下げは許さない [定年引き上げ②]
▲見直しのスケジュールイメージ(国家公務員)
前号に引き続き、定年退職年齢の引き上げについて取り上げます。各自治体では、関係する条例や規則を来年4月1日までに改正することになります。だれもが安心して働き続けられる制度にしましょう。
国家公務員の定年年齢を2023年4月から段階的に引き上げ、2031年度から65歳定年とする法改正が行われました。あわせて、当分の間、俸給月額は60歳に達した日後の最初の4月1日(特定日)以後、その者に適用される俸給表の職務の級及び号俸に応じた額に7割を乗じて得た額とするよう「給与法」の改定も行われています。
総務省は、自治体にも国と同様の措置を求めており、賃金水準の引き下げを許さないとりくみが必要です。
月例給が再任用を下回るおそれも
現在、自治体では60歳の定年を迎えた職員は、基本的には再任用職員として65歳まで働けることになっていますが、現行の再任用職員制度自体が、低すぎる賃金水準であり、扶養手当や住居手当など生活関連手当も支給されず、期末勤勉手当も少ない月数です。定年引き上げで新たに設けられる「定年前再任用短時間勤務」の制度も現行の再任用制度と同様であり、再任用職員の賃金水準の改善こそが必要です。
さらに、国と同様に特定日以後の賃金水準を仮に7割とすると、再任用職員の賃金水準を下回るケースがでてきます。これでは60歳以降もフルタイムで働く意欲も削がれ、技術の継承や行政運営等にも支障が出るおそれがあります。
国の制度や運用を画一的に運用することなく、賃金水準を引き下げさせないようたたかいを強めましょう。
生涯賃金の引き下げも狙われている
さらに、国では2031年3月31日の制度完成にあわせて、60歳前後の給与水準が連続的なものとなるよう所要の措置を講ずることとされています。具体的には、①人事評価の適正化、②昇任・昇格の基準の見直し、③昇給の基準の見直し、④給料表に定める給料月額の見直しに言及されています。
これらの見直しは、若い人達は、現在の60歳時点の賃金水準に到達しないことを意味します。定年引き上げは、すべての世代の課題として、たたかうことが重要です。