自治労連 2023国民春闘討論集会 自治体で何をなすべきか住民とともに考えよう 行政と企業の関係が逆転
新しい資本主義とは何か ―自治体への影響― [講演] 奈良女子大学 中山 徹 教授
政府がかかげる「新しい資本主義」とは何か。政府や財界のねらいと問題点、自治体への影響について学び、23国民春闘で国民要求と職場要求をどう実現するか考えます。(昨年12月3日に行われた国民春闘討論集会での奈良女子大学の中山徹教授の講演より)
医療、福祉、教育などが企業の収益の対象に
政府がかかげる「新しい資本主義」について、中山さんは、「政府は資本主義や新自由主義政策で噴出してきた格差やさまざまな社会的問題を『新しい資本主義』の名で乗り越えようとしている」とし、その具体的手段が、「民間の収益活動」と「デジタル化」の2つだと解説。
すでに打ち出されている「デジタル田園都市国家構想」を示しながら、「本来、国や自治体が担う医療や福祉、教育、防災などを大企業に丸々差し替え・食い込ませ、その分野を収益の対象として開放しようとしている」と指摘します。
また、中山さんは「先行する自治体では、大企業が事業内容を立案し実行する主体となっており、行政と企業の関係が逆転している」と自治体のあり方そのものをつくり変えようとしている危険性を訴えます。
▲図 社会保障分野の経済効果
デジタル化の恩恵を受けるのは一部だけ弱者排除につながる
「たとえば、健康管理をしてくれるアプリケーション(サービス)を利用するには相応のデジタル機器も必要になる」「行政は基本無料で行うのは当たり前だが、企業は収益活動として行う。すべてが無料とは限らず、有料になった際、だれが利用料を払うのか」とデジタル化の恩恵を受けるのは一部だけであり、弱者排除につながる危険性を持っていることを指摘しました。
社会保障分野の賃上げと雇用安定が経済活性化に
「地方では、人口流失・減少と消費の縮小で、『デジタル化だ、大型開発だ、企業誘致だ、インバウンドだ』と考えているが、そもそも日本で消費が縮小しているのは低賃金、非正規拡大など国の失策であることは明らか」と労働者の抜本的な賃上げの重要性を話します。また、図を示しながら「社会保障の拡充は、何より雇用効果が大きい。社会保障分野の雇用をしっかり安定させ、相応の人件費を確保していく。それが経済活性化につながる」と公共・社会保障分野の人員増をすすめ国や自治体の政策が求められていると訴えました。
国と自治体の政策を一体に考え、変えることが必要
4月の統一地方選挙にも触れながら「社会が抱える諸課題を解決しようとするなら、地域だけでがんばっても無理だ。国と自治体の政策を一体として考え、それぞれ変えていくことが必要になる」と話します。
最後に中山さんは、「地域や自治体のことを熟知しているのはみなさん。自治体労働組合が『いま自治体で何をすべきか』を住民とともに考え、政策をもつこと。自ら公務の仕事を充実させるとともに、自治体変革と一体に考えることが必要だ」と訴え、自治労連と自治体労働者に期待を寄せました。
▲オンラインで行われた国民春闘討論集会
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