地域住民のために良い仕事がしたいから
今、知ってほしい職場の課題
▲職場訪問(残業実態調査)を行う茨城・常総市職労
新入職員のみなさん。仕事には慣れましたか?長時間労働など職場がかかえる課題について解説し、課題解決に向けた各地でのとりくみや運動を紹介します。みなさんもとりくみに参加して、一緒に改善をすすめていきましょう。
1.長時間過密労働を解消しよう
労働組合で職場の雰囲気を変えよう
みなさんの職場では夜遅くまで働いている職員はどのくらいいますか? 長時間過密労働は、職員の体と心を壊す大きな原因です。総務省の最新調査(2021年)では職員1人当たりの時間外勤務時間は年間148・2時間であり、年々増加しています。
また、自治労連の全国アンケート調査では、不払い残業(いわゆるサービス残業)は、正規雇用では月10時間44分、非正規雇用でも月7時間45分あり、不払い残業の理由が「短時間の残業だから」「申請しづらい雰囲気がある」となっています。
不払い残業をなくし、長時間労働を解消するには、「仕事に専念できる人員増と体制強化を」と交渉して改善し、職場の雰囲気を変えていくことが重要です。実際に徳島県立病院労組では看護師の始業前超勤について適正化を実現しました。
抜本的な人員増と法改正で時間外規制を
長時間労働の是正に向けて、職場訪問(残業実態調査)を実施している組合があります。調査した結果や聞き取った声などを当局との交渉に活用しています。
また、大阪府職労・京都府職労連・京都市職労の仲間が「公務にも抜本的な時間外労働規制を」と、国に保健師などの人員増と労働基準法33条の見直しを求める「33キャンペーン」を広げ、大きな注目を集めています。
公務職場の長時間過密労働の問題は、国会で取り上げられ、「令和5年度地方財政対策」に保健師450人などの増員のための地方交付税措置が盛り込まれました。
2.住民のために公共を取りもどそう
コロナ・災害で「公共」「自治体」の役割明確に
新型コロナ感染症対策で保健所や医療現場の労働者が奮闘し、多くの住民に「公共」や「自治体」の役割と重要性が理解されてきています。
しかし、保健所や医療現場がひっぱくしたのはそもそも政府の公務員数や社会保障費の削減、公立病院の統廃合や保健所減らしなど、住民生活をないがしろにしてきたことが大きな原因です。
自治労連は、住民のいのちとくらしを守る公務公共の拡充と、その担い手である職員自身のいのちと健康を守ることを実現する運動にとりくんでいます。
「公共を取りもどす」運動が重要に
各自治体では、指定管理者制度や民営化・アウトソーシングがすすめられてきました。職場でも正規の人員削減とともに、多くの非正規労働者・低賃金労働者(いわゆる官製ワーキングプア)を生み、業務の質を低下させ、事業の継続を困難にさせるなど、「公共」の破綻につながる問題をつくり出しています。
自治労連は、「公共を取りもどす」を合言葉に、人員増と労働条件改善、再度の公営化などさまざまなとりくみを住民とともに展開しています。
愛知から全国に広がった労働組合・保護者・住民の共同による「子どもたちにもう1人保育士を!」の運動で、保育士の配置基準見直しを求める社会的な関心が高まっています。政府は1歳児と4・5歳児の保育士配置基準に対する運営費の一部増額を示しました。
▲「公共を取りもどそう」とアピールする自治労連
3.生活困窮・物価高騰 今すぐ賃上げを
日本だけ上がらぬ賃金 国民生活に大影響
新型コロナ感染症が感染症2類から5類とされ、季節性インフルエンザと同じ扱いになります。しかし、すべてがコロナ前に戻るわけではありません。
中小企業や自営業者に大きな影響を残し、今回の物価高騰によってさらに国民生活全体に深刻な影響を与えています。自治体労働者として、住民や労働者を守るため、生活困窮者や失業者、中小企業・自営業者への支援がよりいっそう重要になっています。
そんななか、世界では最低賃金の引き上げやケア労働者・公務公共労働者の賃金引き上げも行われ、実質賃金は年々引き上がっています。一方、日本は1997年以降、実質賃金は下がり続けています。すべての労働者の賃金の大幅引き上げは急務です。
公務・民間の共同ですべての労働者の賃上げを
公務員の賃金は、国や自治体が決めるものと思っていませんか?
確かに国家公務員の給与などについて人事院は政府に勧告を行い、都道府県・政令市などでは人事委員会が勧告します。しかし、実際には労使交渉で改善させて労使合意の上、条例化をしているので、組合に結集して交渉することが大事です。
また、自治労連では公務の仲間(国家公務員や教職員の労働組合など)や民間労組の仲間と連携して、互いに賃上げのたたかいを共同してすすめています。現在、人事院に対して大幅賃上げ勧告を求める運動をすすめています。(関連記事はこちら)
4.ハラスメントなくしジェンダー平等へ
あらゆる差別許さず悩んだら組合へ相談を
ハラスメントは、被害者だけでなく職場に大きな影響を与えます。地方公務員のメンタル不調による休職者(休職1カ月以上)は職員10万人あたりで1903人(2021年調査)となっており、前年度から約1割増加、10年前と比較しても1・6倍と深刻な状況です。
また、窓口業務や現場対応で住民からの過剰な要求に苦慮する事例(カスタマーハラスメント)も増えています。
ハラスメント行為は早期に発見し、労働組合として毅然とした対応をすることが問題解決につながります。日ごろから仕事の悩みや人間関係についても、職場の労働組合の先輩・仲間と相談できるようにしましょう。
ジェンダー問題にとりくみ みんなが働きやすい職場へ
世界的にジェンダー平等へのとりくみが広がっています。私たちの仕事内容や職場環境でも、みんなが働きやすい職場をつくることが重要です。
自治体でも「男女賃金格差の公表」が義務づけられました。男女の昇任・昇格格差、任用形態ごとの男女の構成比、正規と非正規との賃金格差等を改善していくとりくみにつなげましょう。
また、岡山・高梁市職労女性部では、「職場がこうだったら助かるな」という自らの思いに焦点をあて、市役所などの女性トイレに生理用品を常設するとりくみを始めています。世界的な「生理の貧困」問題とあわせて、身近な問題から私たちの職場と自治体を変えていくことも重要です。
▲生理用品の常設にとりくんでいる岡山・高梁市職労女性部
5.非正規職員の待遇改善と雇用の安定
正規も非正規もみんなで職場改善を
自治体では正規職員と、会計年度任用職員等が一緒に仕事をしています。正規職員と同様の仕事を任されている実態や、非正規職員だけで回している職場もあります。しかし、知識も経験もあるのに賃金水準は低く、雇用も不安定です。
茨城県の一部自治体では、会計年度任用職員の時給が最低賃金を下回る実態が明らかになり、労働組合が運動して「最低賃金を考慮する」旨の総務省通達を出させて改善させました。また、雇用更新の3年限度について、総務省マニュアルが不当な雇い止めの原因となっていた問題についても改善を勝ち取っています。
非正規職員の問題は、すべての労働者の労働条件にかかわる問題として考え、一緒に改善していきましょう。
賃上げと待遇改善、正規職員化を実現
自治労連は、会計年度任用職員の抜本的な待遇改善を求めるキャンペーンを展開し、記者会見などで低待遇の実態と「何とかしてほしい」の声を発信してきました。
総務省への署名提出や交渉を通じて、会計年度任用職員にも勤勉手当の支給を認めさせ、法改正を実現しました。
各地で正規職員化につなげる動きも出ています。滋賀県では会計年度任用職員で対応していた歴史的公文書専門職員を、公文書管理の専門職として正規採用しました。また、広島市の動物園でも嘱託職員の正規化を組合が要求し実現しました。
▲記者会見で会計年度任用職員の実態アンケート結果と声を発信した高知自治労連