踏み出そう公務公共の拡充へ 一人ひとりのいのち、くらしを最優先に
こんな地域と職場をつくりたい 公共を取りもどす運動をすすめる 全国交流集会 茨城・つくば市
▲岡田教授を交えて5人がトークセッションし、会場からも現場の問題について発言がありました
自治労連は、5月20~21日に「公共を取りもどす運動をすすめる全国交流集会」を茨城県つくば市で開催しました。全国から150人以上が参加し、京都橘大学の岡田知弘教授の記念講演と職場改善をめざす仲間のトークセッションが行われました。
人員増やし、住民と職員が希望持てる社会へ
トークセッションで京都の西山郁未さんは「京都市では行財政改革を口実に人員削減がすすめられ、職場に余裕がなくなった。さらに賃金カットや『財政破綻だ』と騒がれて、将来に不安を感じる若手職員から退職者も出ている。職場には子育てや介護、病気を治療しながら働いている職員もいるが、休めない職員と対立させられている。人員を増やして職場に余裕をつくるしか解決策はない」と話しました。
愛知の武藤貴子さんは「保育士の配置基準の改善を求めて『子どもたちにもう1人保育士を!』運動を始めた。配置基準は70年以上変わらず、今の保育現場の実態に合っていない。私自身、園児の気持ちに寄り添う保育を学んできた新人保育士の思いを余裕がなくて否定してしまった苦い経験がある。保育はサービスや商品ではない。どの子にも格差のない保育が保障される福祉に戻したい」と語りました。
民間委託に歯止めと非正規の待遇改善を
愛媛の山内佑樹さんは「愛媛県では、2004年に70あった市町村が合併して現在11市9町となった。合併から20年近く経過し、各自治体は地方交付税の削減、人口減、税収減による財政危機に直面している。さらに学校給食の自校方式からセンター方式への変更、業務の民間委託や自治体病院の指定管理者制度導入など、行政サービスの切り捨てが次々と行われようとしている」と厳しい現状を訴えました。
埼玉の小川裕子さんは「春日部市の学童保育で非正規の指導員として働いている。私たちは専門職として公共性を維持してきた誇りがあるが、指定管理者に移行して以降、職員の配置、保育内容、研修内容等が大きく変わってしまった。全国的に営利企業の参入によって、学童保育支援員の仕事はだれにでもできる、公共性も専門性も必要ない仕事とみなされ、不安定な雇用・低賃金・劣悪な労働条件の募集が後を絶たない。専門性を高め、わくわくするような仕事にすることが、公共を取りもどす方向のひとつだ」と話しました。
「公共」壊す政治を許さず住民とともに立ち上がろう
大阪の坂田俊之さんは「大阪府は全国平均よりも保健師がかなり少なく、特に大阪市は各区にあった24保健所を1カ所に集約し、支所もない。コロナ禍にもかかわらず、大阪府は病院のベッド数を減らし続け、救える命が救えない事態となり、住民のいのちと健康を守る『公共』が壊された。維新政治によって職員数は半減し、大阪では非正規化と民営化が急速に進行した。このようななかで維新政治に対して意見を言って反対してきたのが自治労連だ。一方で、吹田市での市民課業務委託計画を撤回させた経験や広域水道企業団への7市統合を白紙に戻すなど、労働組合と住民が立ち上がり、議会も動かし、『公共』を守り手放さなかった経験が生まれている」と話しました。
参加者は自治体の役割とその重要性、そして「公共を取りもどす」運動の意義を改めて共有しました。
▲[京都] 西山郁未さん(京都市職労)
▲[埼玉] 小川裕子さん(自治労連埼玉県本部)
▲[愛知] 武藤貴子さん(名古屋市職労)
▲[愛媛] 山内佑樹さん(西条市職労)
▲[大阪] 坂田俊之さん(大阪自治労連)
▲集会2日目は、7つの分散会に分かれ、学んだことや各現場の現状を共有し合いました
記念講演 憲法と地方自治 問われる岐路
京都橘大学 岡田知弘教授
岡田教授は、「物価高で住民生活の危機が深刻になり、ロシアのウクライナ侵攻で戦争の危機も現実のものとなった」「大学・研究機関を政府の下に再編支配する動きがある。地方自治もデジタル改革や財政誘導による国からの統制、自治権の侵害が広がっている」と警鐘を鳴らします。
また、「憲法と地方自治の存在意義が問われる重大な岐路に立っている。いかに公共を取りもどす運動を展開し展望を切り開くかが重要だ」「職場と仕事のあり方を問い直す自治研活動が必要だ」と訴えました。