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日本が置かれている戦争の危機 軍事基地化と地方自治侵害

講演 沖縄国際大学大学院教授 前泊(まえどまり) 博盛さん

▲オスプレイが配備されている普天間基地

世界情勢が不安定になるなか、日本が置かれている現状と軍拡をすすめる政府の動きとねらいについて、沖縄国際大学の前泊博盛教授に話を聞きました(3月8日に自治労連で行われた学習会より要約)。

際限なく膨れる防衛費 止まらぬ基地建設強行

岸田内閣は、5年間で43兆円という異次元の軍拡を決定し、本年度だけでも前年比3倍増の8300億円もの弾薬を発注・製造・貯蔵をすすめています。貯蔵先は九州・南西諸島、とりわけ沖縄に集中しています。異次元の軍拡が続けば2026年度以降に防衛費は10兆円規模に達し、予算上では「戦争状態」の様相となります。

これまで沖縄では米軍の騒音問題やヘリの部品が小学校校庭に落下するなど危険な事故が続き、近年では有害物質(PFAS=有機フッ素化合物)による水道水汚染が問題になっています。さらに沖縄近海では4万人の大規模軍事演習が行われ、石垣島や宮古島では市民まつりに自衛隊が軍服で〝行軍〟するなど、市民生活に軍隊が深く〝侵攻〟しています。

大きく変貌する「戦争の形」

一方、ロシアのウクライナ侵攻戦争では、無人機(ドローン)の自爆攻撃やフェイクニュースによる危機や脅威の拡散という形で「戦争の形」が大きく変貌しています。

そのなかで、米海兵隊幹部すら「不要」とする辺野古新基地建設が強行されています。国政選挙や知事選挙などさまざまな選挙で示された「建設反対」の民意を無視し、政府による「代執行」で憲法が保障する地方自治すらも侵害しています。

沖縄県が指摘する環境アセスメントの不備やサンゴ礁破壊。当初3600億円とされた工事費が3倍近い9300億円まで大幅に増額されています。また、「設計変更」に抗議する沖縄県を国が提訴し、問答無用の建設強行措置を講ずるなど、「法治国家」から問題を放置する「放置国家」化を加速させています。

憲法より優先される日米地位協定の異常さ

駐留米軍に国内法を順守させるNATO諸国に比べ、日本では国内法の適用が免除され、憲法より日米地位協定が優先されるいびつな「占領政策」が継続されています。

平時と戦時を分け、在韓米軍に国内法適用や裁判権の行使を求めている韓国の韓米地位協定とは大きな違いがあります。

米軍オスプレイが墜落しても原因が明らかにされないまま飛行が再開され、日本国内を飛び回る。墜落原因の究明など米軍に対する捜査権は放棄されています。

地方「分権」から地方「主権」へ転換を

新しい戦争の時代を迎え、日本でも戦争の危機が高まっています。戦時下では自衛隊は「国体」防衛に動き、国民保護計画では自治体が執行者とされます。しかし首長も職員も住民とともに逃げ惑うしかありません。

中央集権体制のなかで戦争を許せば、地方は見捨てられ、国民の多くが犠牲となります。地方自治体の権限と自治を尊重し、国と地方の間で対等な関係を築くことが鍵です。そのためには憲法が定める「地方自治の本旨」にのっとり、「地方分権」から「地方主権」への転換が急務です。

沖縄の基地問題は、地方自治と地域住民の権利を守るたたかいです。国とは何か、地方自治とは何か、国民に安全と豊かさを保障する枠組みとは何かを、みなさんとともに考えていきたい。

▲沖縄国際大学大学院教授 前泊(まえどまり) 博盛さん
〈経歴〉沖縄県宮古島市生まれ。九州大学大学院助教授、琉球新報論説委員長などを経て現職

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