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第88録 見るたびに姿を変える有明海の海中鳥居

いい旅ニッポン見聞録2024年5月号 Vol.606

日本一の潮の干満差「月の引力が見える町」

見るたびに姿を変える有明海の海中鳥居

佐賀県藤津郡(ふじつぐん)太良町(たらちょう)・大魚(おおうお)神社 海中鳥居

▲SNSの “映えスポット” としても人気(写真は満潮時)

太良町は佐賀県の南端に位置する町で、西側・南側は長崎県に接し、東側は有明海に面しています。

有明海は潮の干満の差が日本一大きいことで知られ、なかでも太良町沖の干満差は最大6メートルに及び、町のキャッチコピーである「月の引力が見える町」はここから名付けられました。

「月の引力」をもっとも感じられる場所が、太良町栄町(さかえまち)の海岸に建立された大魚神社の海中鳥居です。

干潮時にだけ現れる神秘的な参道

この日は干潮が朝6時16分だったので、始発電車で太良町に向かいました。JR多良(たら)駅から徒歩約10分で栄町の海岸に着きます。

海岸に着くと、白い貝殻が敷き詰められた浜の先に干潟が大きく広がり、6キロ沖の沖ノ島(おきのしま)に向かって3基の朱塗りの鳥居が並んでいます。鳥居の下をくぐって参道を歩けるのは干潮の間だけ。朝日に照らし出され、黄金色に輝く干潟と鳥居の姿は非常に神秘的です。

大魚神社と海中鳥居の由来は約300年前、住民の反感を買って沖ノ島に置き去りにされた代官が大魚(ナミノウオ)に命を救われ、感激した代官が建立したと言われています。大魚神社と海中鳥居は多良岳(たらだけ)と沖ノ島を結ぶ直線上に配置されており、漁業・農業の繁栄を願う住民の信仰がうかがえます。

満潮時には景色が一変 海に浮かぶ3基の鳥居

どうせなら満潮の姿も見たいと思い、6時間後に再訪。干潮時に一面に広がっていた干潟はなみなみと海水で満たされ、高さ約2・5メートルの鳥居は半ばまで海中に沈んでいます。朝方とはまったく様相の異なる光景に驚かされます。

朝夕夜や、月明かり、星空、潮位などでさまざまに姿を変える有明海は見飽きることがありません。また、有明海は竹崎(たけざき)カキや竹崎カニなど豊富な海の幸をもたらし、町内には、たら竹崎温泉もあります。

あなたもこの町で「月の引力」を感じてみませんか。

▲時間帯や潮の干満で大きく姿が変わります(写真は干潮時) 

▲太良町の特産物・竹崎カキと竹崎カニ(太良町観光協会提供)