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第139湯 中世日本の香り漂う「信州の鎌倉」

悠湯 旅情2012年5月号 Vol.462

別所温泉とともに育まれた歴史と文化 長野県上田市

中世日本の香り漂う「信州の鎌倉」

 戦国時代、二度にわたる徳川勢との戦いに勝利するなど、伝説的な存在となっている真田氏が治めていたのが、長野県上田市です。上田市は、真田氏の居城だった上田城の城跡や、太平洋戦争によって志半ばで戦場に散った画学生たちの遺作を収蔵した無言館など、多くの名所を抱えるまちです。そんな見どころいっぱいの上田市のなかでも、今回は少しだけ足を延ばして、別所温泉に向かいます。  別所温泉は上田盆地の西側、上田市街から南西に進んだ先に広がる塩田平と呼ばれる地域に開けています。別所温泉の開湯時期は正確にはわかっていませんが、奈良時代にはすでに開かれていたと伝えられており、「日本最古の温泉」のひとつに挙げられています。  風情のある上田電鉄別所線の終点、別所温泉駅から温泉街に入ると、硫黄泉特有の香りが漂います。別所温泉には約20の温泉宿が営業しているだけでなく、石湯、大師湯、大湯などの共同浴場があり、気軽に温泉を楽しむこともできます。これらの共同浴場は、史料上の根拠はないものの、それぞれ木曾義仲、慈覚大師、真田幸村のゆかりの湯といわれ、池波正太郎の著作『真田太平記』にも登場したことが宣伝効果を生んでいます。  別所温泉は、温泉そのものの魅力はもちろん、この地に点在する多数の文化財がその魅力をいっそう輝かせています。この地方は、鎌倉から室町時代の中世文化が数多く残る、日本でも珍しい場所として注目され、戦後は「信州の鎌倉」とも呼ばれるようになりました。なかでも安楽寺、常楽寺は塩田平の文化財の中心的な存在で、現存していない長楽寺と併せて「三楽寺」として、塩田平の歴史を見守ってきました。  安楽寺の裏山には、長野県初の国宝として指定された八角三重塔がそびえています。現存する八角形の塔は日本唯一で、四重にも見えるその姿は、訪れる者に神秘的な感動を与えます。  これらの文化財の数々を、歩いて観て回れるのが別所温泉の宿の魅力でもあります。そのなかでも代表的な温泉宿として高評価なのが「上松屋」です。2つの展望風呂や3つの露天風呂はいずれもかけ流しの源泉で、文化財めぐりの疲れを癒してくれます。

▲落ち着いた雰囲気を残す温泉中心街の参道。奥には北向(きたむき)観音が見えています

▲安楽寺の奥にそびえる国宝・八角三重塔。四重に見える最下段は「裳階(もこし)」という庇(ひさし)の類であるとのこと

 


温泉メモ

【信州・別所温泉「上松屋」】

所在地/
〒386−1431
長野県上田市別所温泉1628
問い合わせ/
0268−38−2300
交通/
JR上田駅から上田電鉄別所線に
乗り換え終点「別所温泉」駅下車、
徒歩10分