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機関紙『自治体の仲間』2012年 4月号 Vol.461 東日本大震災から1年 復興へ、地域・住民と歩む

東日本大震災から1年 復興へ、地域・住民と歩む

岩手発 2年目の想い、願い、決意

3月11日、東日本大震災から1年を迎えました。2月下旬、春を呼ぶ雪が津波で押し流された市街地を真っ白に覆う岩手県三陸沿岸の被災地を訪ねました。静かに光る海にはカキやホタテの養殖いかだが復活し、商店も仮設店舗で再開し、住民のみなさんは復興に向けがんばっています。この1年、語り尽くせぬ思いで生き、奮闘されてきた4単組の委員長に、復興の現状と自治体・公務公共労働者の思いを聞きました。

▲カキの養殖いかだが復活した大船渡湾入口

生活の再建へ連携を大切に

陸前高田市職労

市の復興計画ができ、住民の最大の関心はいち早い住宅の再建です。建設業は仕事も増え、中小企業・商店も仮設店舗などで復活中です。しかし、農水産業はまだ厳しい状況です。職員は当初より落ち着いてきました。100人以上の職員が犠牲になりましたが3年間で人数は戻す予定です。新規採用組合員の歓迎会も行いました。長丁場ですから、住民の福祉向上と職場の連携を大切に立ち向かっていきます。

▲おらが大槌復興食堂が11月にオープン。町内の人たちでつくったNPO「おらが大槌夢広場」が食堂運営と資料収集・記録づくりにとりくんでいます

▲陸前高田市職労委員長
菅原正弘さん

励まし合いながら住民生活の再建

大船渡市職

震災後、国保が急増したが、失業保険打ち切りなどで、また国保から社会保険への転換が増えていますが、いまだに仕事に就けない人が心配です。災害復興住宅には550億円を予算化したが、平坦地が少なく、2メートルの浸水まで許容する計画です。グループ再建で水産業の復興は始まっています。職員同士団結して、地域と住民生活を立て直す復興に、組合としても力を尽くします。

▲左:大船渡市職委員長 佐藤力也さん
右:書記長 金野道程(きんの みちのり)さん

地に足を着け住民の願いに応える

大槌町職

高齢化と資金面から災害復興公営住宅への期待が大きいです。地区ごとの懇談会を積み重ね、煮詰めた基本計画ができたことは町の誇りです。水産業の復興には、早く土地利用を決める必要があります。救援から多様な復興業務が加わり、職員は限界に近いが、新採職員も震災直後から手伝ってくれ元気です。地に足を着け、住民が今求める業務こそが重要だと思います。産品支援など長い支援をお願いします。

▲大槌町職委員長 小笠原純一さん

次世代に思いを伝え住民とともに生きる

山田町職

山田湾では、カキ・アワビのいかだが増えています。1月から、高台移転について地区懇談会が開催されています。職員は増員の見込みですが、復興のため、これまで経験のない区画整理などで技師が多く必要です。
組合大会を2月に開催しましたが、代議員も若い人が多く、次世代に思いを伝え団結を図ります。僕もあと20年以上役場にいます。10年以上の復興への覚悟で住民とともに生きていきます。

▲山田町職委員長 伊藤尚生(たかお)さん

被災者本位の一日も早い復興を

東日本大震災津波1年 岩手県民集会

「被災者本位の一日も早い復興を」と、東日本大震災津波救援・復興岩手県民会議は3月4日、盛岡市内で250人が参加して集会を開催しました。「阪神・淡路大震災の災害復興」で関西学院大学・室崎益輝教授の記念講演と被災地からの報告や県民会議の運動のとりくみに、参加者は復興への思いを共有しました。


全国へ発信

岩手自治労連 復興支援地場産品

岩手自治労連は被災地地場産業の復興をすすめるため、単組推薦で観光協会・生産者・商店の協力でカタログを作成しました。4月上旬発送、全国に支援をお願いします。


主張
重要な局面を迎えた通常国会

国民的な共同を広げ、「社会保障・税一体改革」阻止を

東日本大震災から1年。復興をめざし各地で懸命の努力が続いています。被災自治体の職員は、親族と仲間を失い、庁舎も被災した中で献身的に奮闘しています。全国の自治体は、集中改革プランにより人員削減された厳しい状況でも、被災自治体に職員を派遣しています。福島では、放射能の除染が進まず、家族が分断され、復旧の糸口さえ見えない住民を支えながら自治体労働者の懸命の努力が続いています。

ところが国会では、民・自・公の密室談合による議員立法で国家公務員の賃下げ特例法が強行され「地方公共団体が自主的かつ適正に対応」という附則まで付けました。賃下げは憲法違反の暴挙であり、地方公務員への波及を許してはなりません。
また、大阪維新の会による憲法違反の思想調査、職員・教育基本条例、組合事務所撤去等の攻撃、地方議員による労働条件の切り下げ提案も出ています。国会と地方での公務員攻撃は一体のものであり、全国で反撃しましょう。
「復興増税」で被災者・国民が苦しめられるなか、「復興特区法」が成立しました。大企業の利益を保障し、構造改革を進める「総合特区法」を下敷きに、震災に乗じて被災地を経済特区にするものです。「被災地域の住民の意向が尊重」される復興を実現しなければなりません。
国会では、消費税増税を見越した予算が可決され、いよいよ「社会保障・税一体改革」に踏み出そうとしています。「一体改革」は、保育、医療・介護、障がい、年金、生活保護を、自己責任と保険・消費税による「共助」の制度とし、社会保障の根底を覆す大改悪です。消費税を「福祉目的税化」し、「社会福祉の充実を求めるのなら、消費税率引き上げを認めよ」という許せない改革です。さらに消費税引き上げの口実に、民主主義の根底を突き崩す衆議院比例定数80議席削減まで持ち出しています。「社会保障・税一体改革」とのたたかいは、日本の社会の根本をめぐるせめぎあいです。
この間、原発ゼロをめざす世論は巨大な国民運動として全国に広がっています。TPP参加を巡っても44道府県と1400を超える市町村議会が参加反対・慎重を期すべきなど決議を上げています。普天間基地移設反対の沖縄県民の世論も揺るぐことなく広がっています。こうした国民的な運動の広がりと結んで、「社会保障・税一体改革」を許さない世論を大きく広げようではありませんか。


賃下げ法の本質つかみ地域や議会への訴えを

〜地方への波及にどう対応するか

公務員賃金削減法案を強行 猿橋書記長が語る

民主・自民・公明3党の密室合意によって強行された公務員賃金削減法は、地方公務員にも国家公務員と同様の賃下げを求めるかのような附則が突如加えられました。今後のたたかいを猿橋均書記長が語ります。


地方に賃下げを強要

国家公務員に連動した地方公務員の賃下げは、昨年6月の法案提出時から、当時の片山善博総務大臣をはじめ、政府として「地方へは波及させない」と言明してきました。附則は「この法律の趣旨を踏まえ、地方公共団体において自主的かつ適切に対応」として、東日本大震災の復興費用捻出を理由にしながら、事実上、地方に賃下げを強要しているものとなっており、到底容認できません。今後、自治体当局だけでなく、議員提案として一方的な賃下げが強行されることが懸念されます。「労使で合意したことを議決する」という当然のルールを守らせることが大事です。

賃下げ法は憲法違反その上経済に悪影響

今回の賃下げは、月例給で5〜10%、一時金は一律10%という極めて大きなもので、懲戒処分に相当するものです。生活設計をも狂わせかねない賃下げが、人事院勧告制度を無視して強行されることは憲法違反の暴挙です。
同時に公務員の賃下げは、日本経済に大きな影響をもたらします。労働運動総合研究所は、民主党政権が「国家公務員人件費の2割削減」を実施した場合、影響を受ける労働者数は626万人で、消費が5.2兆円、生産が10.7兆円減少し、税収は8133億円も減るという試算を発表しています。大震災からの復興のためにも、すべての労働者の賃上げによる内需拡大で、日本経済の立て直しを図ることこそ急ぐべきです。
公務員賃下げは、社会保障削減の一方で消費税増税をすすめるための「露払い」の役割を担っています。政府の「税・社会保障一体改革」反対のたたかいとともに、賃下げ法の本質を議会や地域に訴え、住民の理解をすすめ、賃下げを阻止しましょう。

▲情勢報告をする猿橋書記長

賃下げ法許すな、雇い止めやめろ

3・8国民春闘勝利中央行動

労働基本権の全面回復を

午前11時、自治労連は独自行動として総務省前要求行動を展開しました。野村幸裕委員長は、使用者責任を放棄した賃下げ反対と非正規職員の雇い止めとのたたかいを強調。「誇りと希望を持ってがんばろう」とあいさつしました。並行して非正規公共評の代表が6万5680筆の要求署名を携えて総務省要請を行いました。

決意表明のなかで、岩手自治労連の高橋昭博副委員長は「公務労働者は被災者に寄り添い、今も懸命に働いている。復興に冷や水をあびせる賃下げは許せない」と力を込めて発言。大阪自治労連の塩見悦子執行委員は「橋下・維新の会の蛮行とたたかう大阪市労組は、職員を励ましながら、自治労連単組として全国の励ましに応えてたたかえる喜びを実感している」と報告しました。また医療の立場から自治労連愛媛県本部の若藤美鈴副委員長、非正規公共評を代表して広島市関連労組連絡会の前田滋議長が決意表明しました。
厚生労働省前総決起行動で、国民春闘共闘・大黒作治代表幹事(全労連議長)は「大企業が抱える266兆円の内部留保を賃上げにまわせ、国内産業を守れの声を集中しよう」と訴えました。また、高知自治労連の山崎朋哉執行委員が「新システム」で自治体懇談や地域での幅広い共同のとりくみをすすめると決意表明しました。
全労連公務部会主催の総務省前行動では、使用者責任を放棄した「賃下げ法」と、政府・民自公3党の密室協議を糾弾するとともに、労働基本権の全面回復を総務省に要求しました。

▲総務省前に座り込んで要求行動

新システムは撤回せよ

保育で、3・9政府・国会行動

「新システム撤回、よりよい保育を求める政府・国会要請行動」に全体で250人が参加。国会議員要請や厚労省要請行動等を行いました。500人を超える国会議員に要請し、「法案反対に全力でとりくむ」という自民党議員など、多くの反応がありました。
厚労省要請では、当局の姿勢を厳しく追及。保育の質の低下が危惧される「新システム」で子どもの未来に責任を持てないと強調し、現行制度堅持を強く迫りました。


消費税大増税を斬る シリーズ(1)

消費税増税は社会保障には使われない

野田政権は、消費税増税法案を閣議決定し、今国会に提出しようとしています。「一体改革」では、消費税を2014年4月に8%、2015年10月には10%に引き上げ、必要な社会保障の機能を強化するとしていますが、その中身は正反対です。


「1円」も充てられない

政府の計算では、消費税率1%で2兆7000億円、5%で13兆5000億円の増税となります。「社会保障・税一体改革」で、政府は5%の内、4%の10兆8000億円を「社会保障の安定化」に、残りの1%は「社会保障の充実」に充てると説明しています。
4%10兆8000億円の「安定化」とは、従来の社会保障予算の財源を、消費税に置き換えるということです。したがって、従来の財源分4%は浮くこととなり、社会保障費以外に使うことになり、大企業減税穴埋めに使われます。
「充実」分とされている1%2兆7000億円については、表のように、「一体改革」で実施される年金減額(約2兆円)、子ども手当削減、老人医療費引き上げ等の負担増が行われ、社会保障の「充実」とはなりません。そのうえ将来は、年金支給年齢の延長などが検討されており、社会保障には1円も使われないということになります。
野田内閣は、消費税を「福祉目的税化」するとしていますが、その実態は前述の通りで、2月に閣議決定された「社会保障・税一体改革」案では、社会保障については増税と社会保障削減方針だけが明記され、改善らしき部分はほとんどが「今後検討」とされており、「消費税増税分を社会保障の充実に充てる」という政府の宣伝の大ウソは明らかです。このことを国民に広く知らせ、消費税増税をストップさせましょう。


「震災復興」「原発なくせ」全国駆け巡る

東日本大震災から1年。3月11日、犠牲者を追悼し、被災者の生活再建を最優先した震災からの復興、原発をなくせ、原発事故被害への全面賠償と原発依存政策の転換を求める集会や行動が全国でとりくまれました。


原発いらない3・11県民大集会 福島

1万6000人が参加

福島県郡山市の開成山野球場で「原発いらない3・11福島県民大集会」が開かれ、昨年10月に福島市で行われた1万人集会を大きく上回る1万6000人が参加し、被災者本位の復興と原発なくせの県民の強い願いを示す集会となりました。
集会では、ノーベル賞作家の大江健三郎さんが「国の最大の責任は、国民の生命と財産を守ること。ドイツは国として原発廃止を決めた。これを決めた議会は、利益ではなく倫理を中心としたメンバーで構成して議論された。倫理的な責任とは、この地球で人間が生きることを妨げないことです」と訴えました。
県民の訴えで相馬市の佐藤美恵さんは「津波で両親は死んだ。船は守れたが漁には出られない、放射能がそれを許さない。もう一度、全国の人に福島の魚を食べてほしい」
自治労連福島県本部と郡山市職労は集会実行委員会に参加し、集会会場のスタンドの雪下ろしや会場整理等、集会成功のために大奮闘しました。
福島県本部は県労連とともに、住民の避難生活が続く被災・避難自治体への訪問を開始しました。住民生活の実態と雇用対策、除染・健康、賠償問題について懇談をし、福島再生に向けて住民要求実現に結びつけるため奮闘を続けています。

▲集会ではノーベル賞作家の大江健三郎さんがあいさつ(福島県郡山市開成山球場)

各地で震災1周年行動

東京

「震災復興・なくせ原発3・11行動in東京」に8000人が参加。自治労連は独自ブースで大震災以降のとりくみをパネル展示し、被災地の特産530品を販売しました


山口

山口県柳井市で開催された「3・10さようなら原発1000万人アクションin柳井」には1200人が参加しました


新連載 自然・再生エネルギーの街めざして(1)

埼玉・所沢市職労

「原発ゼロ」の全国各地での幅広い市民参加の運動をいっそう広げるために、自然・再生可能エネルギーへの転換のとりくみが始まっています。各地の調査・研究、地域産業活性化などの連載を開始します。とりくみ・報告を募集中です。

連続企画でエネルギー政策を考える

所沢市職労では、震災以降、私たちにできることは何かを考えてきました。ボランティア活動はもちろん、毎月11日を目途に駅頭に立ち、市民に広く募金も呼びかけてきました。
そして、東日本大震災・福島原発事故を忘れず、所沢市民とともに支援の輪を広げ、私たちのくらしを考えるきっかけにと、「震災と原発を考える連続企画」として3つの企画にとりくみました。
2月27日には、神戸女学院大学の石川康宏先生を招き、震災以降の日本の情勢を経済学の観点から話していただきました。3月4日には「震災と原発を考える市民のつどい」を開催し、つどいには700人を超える市民が参加し、震災関連・原発関連のドキュメンタリー映画の上映と陸前高田市職労の保育士からの報告などを行いました。3月24日には、京都大学の小出裕章先生の講演会の賛同団体として、とりくみをすすめました。
「市民のつどい」のアンケートでは、「原発反対と改めて思う」「『中立=賛成』は重い言葉。『中立』ではなく何か行動に移していければ」など多くの声が寄せられました。
今、日本のエネルギー政策は分岐点にあります。しかし、くらしに大きく影響するエネルギー政策をどう考えていくのかは、まだ道筋が見えていない状況にあります。そうしたなかで、私たちは真実を知り、考えることができるとりくみをこれからも市民と一緒にすすめていきたいと思います。

▲「市民のつどい」のディスカッションでは陸前高田市職労の保育士から被災の経験や被災地の現状が語られました

国民の求める真の福祉・社会保障拡充を

鳥取で『改革』を考えるつどい

福祉や社会保障の改悪が進むなか自治労連鳥取県本部は、鳥取県社会保障推進協議会と協賛団体共同の集いに参加し、真の福祉・社会保障の拡充にとりくんでいます。


3月3日鳥取市で、「ちょっと待った消費税増税!税と社会保障の一体『改革』を考える」集いが、約200人の参加で開催されました。
この集会の目的は、野田内閣が消費税増税とセットで、福祉・社会保障の全面改悪へ暴走しているなかで、「構造改革路線の本質」をとらえ、分野別の運動を強化するとともに、分野の垣根を越え、福祉・医療・保育等の幅広い共同・連帯を追求し、社会保障運動を抜本的に強化することです。
関西勤労者教育協会の中田進さんを講師に招き、核心をついたユーモアあふれる講演に会場が盛り上がった後、医療・年金・生活保護など各分野からの報告を受け、交流を深めました。「消費税増税を許さず、不公平税制を是正し、真の福祉、社会保障拡充こそ国民は求めている」という大きな運動と世論のうねりを全国の運動に連帯して鳥取でもとりくみを強化します。

▲約200人が集まり、学び、社会保障拡充へたたかいをすすめる決意を新たにしました


パレードと意見広告で保育の充実を訴える

広島市職労 保育園支部

問題だらけの子ども・子育て「新システム」

問題だらけの「子ども・子育て新システム」の存在と中身を広く知らせていこうと、広島県保育団体連絡会とともに3月2日付の中国新聞に全面の意見広告を掲載しました。その費用約350万円を賛同者のカンパで賄うことになり、公立保育園全園(88園)に呼びかけて、9割の保育園―1200人以上から100万円を超えるカンパを集めることができました。

3月4日、あいにくの天気でしたが、「新システム反対!大道芸まつり」と称して本通りを320人でパレードしました。袋町公園での大道芸まつりは雨のため中止になりましたが、保育園支部は、春に出てくる虫や動物のペープサートを持ち、「豊かな保育をすすめる会」の人たちは民族芸能の荒馬や七頭舞いの衣装を身に着け、踊りながらパレードし、道行く人たちに「公的保育制度を守ろう」「待機児解消にならない新システム反対!」とアピールしました。
その後、50人で署名活動をし、157筆の署名が集まりました。

▲本通りを踊りながらパレードする子どもたち

どうなる高齢期雇用と定年延長問題 シリーズ(4)

確実な雇用と年金の接続を
―政府が国家公務員の「基本方針」を決定―

3月23日、行政改革実行本部と国家公務員制度改革推進本部は、国家公務員の高齢期雇用施策として「再任用の義務化」などを柱とする「国家公務員の雇用と年金の接続に関する基本方針」を決定しました。政府は今秋の臨時国会に国家公務員法改正案を提出し、来年4月の施行をねらっています。これまで国の方針決定を待っていた地方公共団体も制度設計に向けて必要な作業に入ることになります。


「義務」が課されない場合も

「方針」では、定年退職者がフルタイム再任用を希望する場合、採用が義務付けられるとしています。しかしながら、問題点もあります。(1)再任用期間は、年金の支給開始年齢に従って段階的に延長するもので、あくまで任期は1年を超えない範囲内で、その期間までの間更新するとしています。(2)「義務化」としつつも、「標準的官職(係員等)に係る標準職務遂行能力及び当該官職についての適性を有しない場合」、その義務を課されないとしています。(3)短時間再任用を希望する場合への対応を「できる限り当該希望に沿った対応」にとどめていることや、「60歳超職員の追加的増加への対応」では、「総人件費改革等の観点も踏まえつつ、必要な措置を講じる」など、選別などが行われかねない表現が含まれています。

ねらいは総人件費削減・消費税増税の露払い

自治労連は、高齢期雇用について「定年延長」を基本とした制度設計を要求してきました。また、昨年人事院は、段階的「定年延長」の意見の申し出をしました。ところが、政府は、高齢期雇用について、消費税増税などの国民負担増の露払いとしての公務員の総人件費削減改革のひとつとして位置付けています。人事院が研究会で十分検討してきたにもかかわらず、わずか2回の有識者による「意見交換会」を踏まえ、「再任用の義務化」を決定しました。

働き続ける権利を保障させるために

高齢期雇用は、公務・民間含め共通の課題であり、年金の支給開始年齢を引き上げたのが政府であり、定年と年金を接続させることは政府の責任です。引き続き、働きつづける権利を保障させる立場からも、「定年延長」を基本とした制度設計を求め、確実な雇用と年金の接続、希望者全員の雇用確保の実現をめざします。


国家公務員の雇用と年金の接続に関する基本方針(抜粋)

1.再任用による雇用と年金の接続

(1)定年退職する職員がフルタイム再任用を希望する場合、当該職員の任命権者は、常時勤務を要する官職に当該職員を採用するものとすること。
ただし、その者が最下位の職制上の段階の標準的官職(係員等)に係る標準職務遂行能力及び当該官職についての適性を有しない場合、任命権者は上記の義務を課されないものとすること。

2.組織活力の維持及び職員の能力の活用のための方策
(短時間再任用の活用)

(2)定年退職する職員が短時間再任用を希望する場合、任命権者ができる限り当該希望に沿った対応ができるような環境を整備すること。


憲法違反を許すな世論の力で「職員アンケート」は凍結・中止

橋下市長の暴挙とたたかう大阪市労組

一方的な組合事務所の退去通知に対し提訴

大阪市は2月10日に突然、橋下市長名の「業務命令」として16日までに職員アンケートを強行しました。大阪市労組は、思想信条や労働組合に関する個人の内心を犯し、労働組合の団結権を侵害する憲法違反の「思想調査」として、その危険性をすばやく全国に発信しました。日弁連会長や大阪弁護士会会長が中止を求める声明を発表するなど、大阪、全国から直ちに中止・抗議の声が集中して急速に運動が広がりました。こうした世論の高まりに、野村修也大阪市特別顧問は17日、凍結を表明しました。

今回の思想調査や異常な職場支配を強める橋下市長の狙いは、職員を萎縮させ労働組合を徹底的に敵視して、市長に忠実に従う公務員づくりにあります。大阪市労組は、市役所を働きがいのある職場にして住民福祉を向上させる市役所にするために奮闘しています。

労使合意なしに2条例案の提出強行

市当局は、市庁舎内の労働組合事務所を「3月31日までに退去すべき」と通知を出しました。大阪市労組連・大阪市労組は、労働組合の弱体化をねらった不当労働行為であり、職員への不当な攻撃の一環として3月14日、大阪地裁に提訴しました。さらに橋下市長は3月16日には、懲戒処分の強化や重罰化の規定など、職員の労働条件などに重大な影響を与える職員基本条例案、教育基本条例案を、労使の合意もなしに市議会へ強引に提出しました。2条例制定の阻止へ、市民や住民団体などと共同してたたかっています。

▲「職員アンケート」・「2条例提出」に対して大阪市役所前での抗議集会

橋下市長は市民と職員に謝罪すべきです

大阪市労組は、憲法違反のアンケート中止、回答データの破棄を求めて、市庁舎や区役所門前の宣伝行動に立ち上がりました。3月13日早朝の宣伝行動は、淀屋橋から大阪市本庁舎の入口まで支援の人たちで埋まり、チラシの受け取りもこれまでと違い雰囲気を一変させました。組合員は行動することで、不当な「アンケート調査」への怒りを強め、職場で悩み迷う職員を励ましました。職場では「子どもに誇れる母親でありたいから拒否する」「処分覚悟で回答しない」など数々のドラマが起こりました。市労組は、回収した職員アンケート廃棄を強く要求するとともに、橋下市長に市民と職員に謝罪することを求めます。

▲大阪市役所労働組合
竹村博子執行委員長


今月の連載・シリーズ

悠湯旅情 第138湯
津波に耐え、ボランティア宿泊拠点に 宮城・南三陸町 南三陸温泉
復興に向け歩み始めた 南三陸の海の素晴らしさに祈り込め

My Way My Life (140)
大阪・藤井寺市職労 沼 俊江さん
太鼓は元気を届けられる

日本列島 おどろき・おもしろミュージアム 第121館
兵庫県神戸市垂水区 孫文記念館
辛亥革命を支えた日本の文化と風土

うレシピ 第10品
愛媛・松山市職労 戸田 克江さん
鯛のマリネ

今夜はマリネで決まりね♥


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