第23録 「遠州の小京都」森町へ走る
2018年新年号 Vol.530
静岡県森町
「遠州の小京都」森町へ走る
秋色を楽しむ自転車の旅
▲天宮神社の境内にある樹齢千数百年の竹柏(ナギ)の木。その隣(写真奥)に立派な舞台が
「遠州の小京都」と呼ばれている静岡県森町(もりまち)。静岡県の西部、太平洋から北へ20キロほどの内陸部にあります。北部三方を山に囲まれ太田川が町の中心を流れています。
JR掛川駅から天竜浜名湖鉄道に沿って田園風景を楽しみながら森町へ自転車を漕ぎだします。
やわらかい柿色「次郎柿」
太田川にぶつかって橋を渡ると森町です。生活道の路地に入ると次郎柿の原木が残されていました。やわらかい甘さが特徴の次郎柿はここ森町が原産地。普段見る柿より薄くやわらかい色の柿が実を付けていました。
11月が食べ頃とのこと。帰路に宮内庁に献上しているという農家の柿をいただきましたが、まろやかな甘さがいい!「甘柿の王様」と言われているだけあります。
住民に支えられ伝承する舞楽
太田川支流を見ながらすすむときれいに整備された天宮神社の参道が目の前。鳥居をくぐり上っていくと本堂と舞(まい)舞台、立派な樹木のある境内が視界に広がります。楽屋から続く立派な舞舞台は、国の重要無形民俗文化財になっている「天宮神社十二段舞楽」で使われています。この舞楽の演目内容は素朴でわかりやすいものです。こちらは青い衣装でゆったり優雅に舞います。一方、同じ町内にある小国神社の舞は赤い衣装で早いテンポの舞と二社一体で成立しているというお話でした。
そして樹齢1500年といわれる立派な樹木の元へ。竹柏(なぎ)の木だそうで、その葉は丈夫でちぎれないことから「縁がきれない」縁結びのパワースポット。「地域のみなさんに支えられ伝承されてありがたい」と神主さんが話してくれました。
良質の土と鮮烈でもやさしい「赤」
太田川支流の紅葉を楽しみながら上っていきます。カヌーや釣り、陶芸などが楽しめる複合施設「アクティ森」で小休止。
森町は良質な「土」が採れ「森山焼」の窯元、陶芸工房が町内にたくさんあります。そのひとつ、静邨陶房(せいそんとうぼう)にお邪魔しました。静邨陶房の作品の特徴は赤焼きです。工房とギャラリーには赤い陶器が一杯です。トマトの赤? レンガの赤?…例えることが難しい。静邨陶房の赤。個人的にはコーヒーを入れたとき映える素敵なコーヒーカップが気になりました。
隣には、「seison puls +」という若い陶芸家の工房・ギャラリーがあり作品を展示しています。「このお皿には何を載せようか」「このカップで何を飲もうか」と、陶器を楽しんでいるうちおなかがすいてきました。
秋の紅葉と森町の「色」を楽しみました。
▲静邨陶房は工房とギャラリー。赤色の陶器がいっぱい
▲次郎柿の原木に立派な実がなっていました