「被災地の自治体職員の人材確保と健康対策の拡充を」総務省・復興庁に自治労連と岩手、宮城、福島で要請
3・11東日本大震災、福島第一原子力発電所の過酷事故から5年が経ちました。放射能汚染水漏れなど、事故収束の目処も立たず、いまだに18万人もの人々が不自由な生活を強いられています。被災者の生活再建の基盤である住宅復興は、高台移転、災害公営住宅の建設など進み始めていますが大幅に事業が遅れ、被災者の生活と生業の再建は国が最優先して取り組むべき急務の課題になっています。被災地の自治体職員・公務公共労働者は、復旧復興のために日々職務に全力を挙げていますが、人員不足、健康破壊は深刻で、復旧復興を進めるためにも解決すべき重要な問題になっています。
3月9日、自治労連は、東日本大震災被災地の自治体職員・公務公共関係労働者の人員確保と、健康対策の拡充を求め、衆議院議員会館内で総務省、復興庁に要請を行いました。
要請には、自治労連本部の松繁副中央執行委員長、江花中央執行委員、平野中央執行委員、鹿野書記。現地からは岩手自治労連、大船渡市職、福島県本部、宮城県七ヶ浜町職の8人が参加しました。総務省からは自治行政局公務員部の課長補佐ら4人、復興庁からは参事官補佐が対応しました。はじめに、松繁副委員長が要請書を手渡し、「震災から5年が経ちます。福島では帰還準備が進められていますが、これを進めるのは職員。被災地では職員が大変な思いでがんばっています。現場の声に耳を傾けていただき、復興に、地方自治の発展のためにいかしていただきたい」とあいさつしました。
総務省からは「復興事業はこれからが本格化。復興事業には人材確保が重要。1月6日に総務大臣名で全国の自治体に職員派遣の協力を求める書簡をだしている。被災団体の要望も聞きながらこれからも人材確保につとめていきたい」とあいさつがありました。
被災自治体の職員は「自分が休職して申し訳ない」と辞めていく
これに対して被災3県の参加者から、「正規職員が圧倒的に不足している。短期間の任期付職員ではなく、長く町の将来を見据えることができる正規職員を採用して、復興事業にあたっていくことが重要」「全国からの派遣だけでなく、長期的にみて人員を補充できる措置の検討をしてほしい」「任期付職員の青年が仮設住宅で自殺した。任期後の人生を悲観したことが原因と考えられる。このような悲劇を繰り返してはならない。任期終了年度の職員に対する新たな対策が必要」「効果促進事業になると人員派遣を断られてしまう」「復興は5年では無理。あと10年以上かかる。国はすべての自治体を見捨てることなく取り組んでほしい」「メンタル問題で辞めた人は、『全国からの応援を受けているのに、自分が休んでは申し訳ない』といって職場を去って行った。長期休暇になった人が何人もいる。退職した後に自殺未遂をした人が1人、過労死した人が2人もいる」と、職場と人員不足の実態を示し、十分な予算と人員を確保する措置などを強く求めました。「メンタルヘルス総合対策事業は、特別交付税で措置されることは歓迎するが、正規職員だけでなく、臨時・非常勤職員にも適用されることを派遣元、派遣先の自治体に対して、周知を徹底して欲しい」と、強く要望しました。
また、放射線被害に対しては、「国と東電によって引き起こされた人災であるという認識をもっていただきたい」「帰還する自治体の職員は、線量の高い地域での作業も見込まれる。自治体が行う放射線健康調査に対し国の助成が必要」と強く求めました。
これに対し復興庁からは「独自で職員を200人採用して市町村へ派遣する取り組みをしている。この職員は任期終了後、直接自治体の職員になる人もいる。任期後の働き方については、調査費をつけてなんらかの取り組みをすすめていく」と回答。
総務省からは、「人が足りないという思いは同じ。そこで昨年10月に政令指定都市に対し人員派遣を求めた」との回答がありました。総務省は、「被災3県の担当者にはメンタルヘルスの新制度について個別に説明をするなど丁寧な周知をしている」「被災地の要望を反映できるよう努力していきたい」と述べました。
最後に、松繁副委員長が「住民生活の安心・安全のために働く職員のメンタルヘルスについても十分留意していただき、一緒に努力しあい良い自治体をつくっていきましょう」と述べ、要請を終えました。