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地域医療と公立病院の拡充を求める「いのちと地域を守る学習・意志統一集会」関係府省・団体要請にのべ103人参加

 自治労連は1月30日に地域医療と公立病院の充実を求める「いのちと地域を守る学習・意思統一集会」を東京・平和と労働センター(全労連会館)で開催し、18都道府県から70人が参加しました。参加者は、開会前に最寄りの御茶ノ水駅前で「白衣の看護師増員署名宣伝行動」を実施。続く31日には医療関係府省・団体への要請行動を行いました。

 主催者あいさつで野村委員長は「菅直人民主党政権『税と社会保障の一体改革」は法人税減税・消費税増税そして社会保障切り捨て路線であり許せない。『新成長戦略』のTPP参加は医療分野にも大きな影響をおよぼすものだ。こうした中で公立病院改革プランの策定、経営形態の見直しがすすむことは地域医療をさらに厳しい状況に追い込むもので、職場の疲弊を生むことは明らかだ。一方で運動は広がっている。現場の仲間を一人にせず、地域医療を守るために奮闘しよう」と呼びかけました。

 基調報告では高田憲法政策局次長が、この間の医療制度改悪とTPP参加により、国民皆保険制度自体が崩壊の危機に直面している状況を報告。全国の絶対的な看護師不足により、看護師は現場の問題を発信する余裕もない状況のなかで、厚生労働省による第7次看護師需給計画でも、H23年に5万6千人不足する調査結果が示されていること、自治労連が08年に実施した自治体病院アンケートでも看護師不足による病棟閉鎖や救急医療の停止など深刻な状況があることを指摘し、「医療従事者の増員なくして安心・安全の医療の確保はできない」とあらためて強調しました。看護師増員がないままの7:1看護体制により3交代の夜勤サイクルが不規則となり、さらに長時間残業が横行するなかで、極限状態の選択肢として2交代制16時間夜勤の導入が広がり、結果的に現場の疲弊・健康破壊が加速し、安全性のリスクも拡大する。それが看護師の離職率を高めるなど矛盾を広げている実態を、データをもとに解明しました。
 一方、全国で地域医療を守る自治体労働者・医療従事者・地域住民との共同の運動が広がっていること、自治労連の全国の運動を紹介し、そのもとで今後のとりくみとして、①社会保障費の増額、医療費と医師・看護師抑制政策を転換させる国民的なたたかいと結合し、職場・地域からの運動を進める。また医療制度改悪に反対し、国民皆保険制度の空洞化を許さないたたかいを強化する。②各自治体で策定されたそれぞれの「改革プラン」が住民のいのちと健康を守るものなのか、その検証を行い、地域医療と自治体病院を充実させる施策を求める取り組みを推進する。③厚生労働省が進めている「地域医療再編基金」については、地域での議論が不十分な計画案であることを勘案し、計画の修正と地域医療充実の活用を求める。④医師、看護師、医療従事者を増やせの運動を、職場と地域そして全国規模で行う―ことを柱に具体的な取り組みを提起しました。

「看護職員労働実態調査」中間報告で2交代勤務の矛盾が浮き彫りに
 基調報告に続き、自治労連が昨年10月~12月に実施した「看護職員の労働実態調査」アンケートの中間集計報告(9167人分)がおこなわれました。
 1年前に比べての仕事量については「大幅に増えた」27%・「若干増えた」36%で6割強が業務量増となっており、超過勤務は20時間未満が全体の8割を占めるものの、約60人が過労死ラインを超える長時間残業を引き受けており、加えてサービス残業は全体の82%がおこなっている実態が浮き彫りになりました。
 勤務形態は3交代61%・2交代15%と、3割を超えている民間に比べて3交代を維持していることがわかります。3交代と2交代勤務の労働実態比較では、休憩時間、休日の取得など、2交代であっても3交代とほぼ同じ結果となり、2交代の導入が労働条件改善につながらず、ただ世界的に例のない16時間もの長時間夜勤を担う事となることが浮き彫りになりました。
 また、77%が職場のセクハラを受け、62%がパワハラを受けるなど、一般の職場とは比較にならないほど多い実態も抽出できました。そして72%が仕事のやりがいを感じながらも、一方で80%が仕事を辞めたいと思うと回答しており、看護師がいかに過酷な労働環境に置かれているか具体的に明らかとなりました。

地域医療シンポジウムで情勢と運動を交流
 続いてシンポジウム形式で地域医療をとりまく情勢と運動について交流と討論をおこないました。
 はじめに京都自治労連・山本裕さんから、地域医療・自治体病院をめぐる情勢と課題について、これまで「構造改革」のもとですすめられてきた「医療破壊」の政策と民主党の「新成長戦略」「地域主権改革」が一体のものであること、それらの攻撃のもとでも全国的な運動による進展と今後の運動の発展方向についてのべました。
 続いて住民運動の立場から、地域医療と公立病院を守る千葉県民連絡会の小関厚さん(千葉県職労)が、千葉県内の公立病院と地域医療を守る住民運動を、住民団体と自治体労働組合とが共同で県内全域の連絡会として運動をすすめてきたことについて報告しました。
 京都市職労・太田あゆみさんは「改革プラン」による経営形態見直しによる京都市立病院の独立行政法人化で、地域・住民と一緒になって反対運動に取り組み、独法化は阻止できなかったが、「地域の政策医療は交代させない」「経営効率化を優先しない」などの成果を勝ち取ったこと。市立病院の運営が数値目標や効率性・採算性に偏重することなく、自治体病院として公的役割を果たさせていくために、引き続き地域・住民と共同して運動していくと語りました。
 都庁職病院支部の大利英昭さんは、病院支部で独自にとりくんだ16時間夜勤疲労度調査の結果について報告。討論でも2交代制勤務問題に関する発言が多く出され、高田憲法政策局次長は「2交代か3交代かの選択ではなく、3交代の勤務形態の改善を労働時間短縮の運動と連携して取り組むことが強く求められている」と行動提起しました。
 柴田副委員長が集会のまとめを行い、地域医療・公立病院の拡充の課題、看護師増員の課題でも、今春闘で思い切って地域にうって出ようとよびかけました。