2017年自治労連介護関係労働者全国交流集会を開催 全国から66人が参加・交流
7月1~2日、「2017年介護関係労働者全国交流集会」が名古屋市で開催されました。集会には全国から66人が参加し、介護予防・日常生活支援総合事業(以下、「総合事業」)が各自治体において実施段階に入っている中で、それぞれの地域の介護の現状や介護職場の労働実態について交流しました。
1日目の記念講演では、河合克義先生(明治学院大学社会学部教授)に「社会保障は国の責任!日本の介護をめぐる現状と課題~高齢者の生活問題から検証する~」と題して講演いただきました。河合先生は、まず、「65歳以上の高齢者のうち実際介護保険サービスを利用している人は1割半から2割程度しかいないという現状がある。高齢者の生活問題や孤立化は深刻化していて、都市部・地方にかかわらず亡くなって長期間発見されないという高齢者が増えている」とし、「繁栄の中心にある東京でも一人暮らしの高齢者の半数は貧困線以下の経済的に困窮した状態にある」と報告しました。その上で、自治体と地域の共同した運動の重要性にも触れながら、「介護保険になかなか繋がらない高齢者が増加している中で、地域の高齢者の生活問題や貧困問題を全体としてどう見るのか、という視点で政策をつくりだしていくことが重要だ。その中で、介護保険制度はどのような位置にあるのかということを考えなければならない」とまとめました。
基調報告で自治労連介護対策委員会事務局長の前田中執は、「共謀罪の強行採決や改憲を推し進める安倍政権のもとで、介護を含む社会保障も改悪され続けている」と述べました。また、介護においては、さらなる給付抑制・利用者負担増や、要介護1、2の保険はずしなど、介護を必要とする人が受けられなくなっているという問題があること、一方では、「現場は人手不足や長時間・過密労働で疲弊しており、現場の献身的努力にも限界はある。福祉としての介護の保障や、それを支える現場の介護職員の労働条件や処遇も含めて、国や自治体の公的責任が問われなければならない」と訴え、「一緒に声をあげる組合員を増やし、地域から大きな声をあげていきましょう」と呼びかけました。
そして、河合先生をコーディネーターに、4人からの報告によるシンポジウムを開催しました。まず、鳥取県本部委員長・植谷和則さんから鳥取県本部での非正規職員等の労働条件改善・正職員化や人事考課導入反対の取り組みについて、愛知県豊橋市職労福祉保健支部ヘルパー分会・朝倉美栄子さんから主にヘルパーの労働の現状と実態について、自治労連本部組織局の松尾中執が介護職場での組織化について、みえ自治労連の村瀬博さんから、三重県桑名市における「総合事業」の実情と課題が報告されました。それぞれの報告を受け、介護からの「卒業」という考えのもとで介護保険制度が運用され、利用者に無理な自立を迫るという実態や、介護労働者の労働条件改善のための労働組合の重要性、現場から積極的に声をあげ社会に対してアピールし運動をすすめていくことの重要性などについて議論が交わされました。
2日目の分科会は2つの分科会に分かれ、分科会①「地域の高齢者福祉を考える」では、はじめに滋賀県・大津市労連執行委員長の小川治彦さんが、大津市における高齢者の暮らしと貧困問題について、次に、1日目のシンポジウムに引き続きみえ自治労連の村瀬博さんが、三重県内における「総合事業」の実態について報告しました。
その後の参加者交流では、「総合事業」への取り組みが各自治体でなかなかすすんでいない実態が浮き彫りになり、今後「総合事業」の現状や問題点についての理解を深め、地域住民にも伝えていかなければならないとの認識を共有しました。また、国による介護保険制度の改悪を許さず、保険サービスの拡充を要求する運動をすすめていかなければならないことも確認し合いました。
分科会②「介護労働者のより良い仕事をめざして」では、2分散会に分かれて交流が行われました。分散会1では、各参加者から、仕事を通して「困っていること」「改善したいこと」を語ってもらうとともに、労働組合の運動を通じて要求が前進した経験などが出され、「みんなが組合に入ることが、最大の力」と言って説得しているとの経験交流も行われました。分散会2では、特養で14年間勤続していても給料が上がらずなお年収200万円前後しか得られていないことや、40人の利用者を2人で見るなど、介護施設ではどの職場も慢性的に人手不足であること、人手不足によって新人育成ができなかったり、学習会や組合活動に参加できなかったり、学習やスキルアップの時間がなかなか取れないことなどが語られる一方で、団体交渉の結果、パートも含めて職員への賞与の増加を勝ち取ることができた経験なども報告され、日々の仕事に追われる状況にあっても、組合活動を積極的に行っていく重要性についても共有されました。