え!あの病院がなくなっちゃう!?~厚生労働省が「再編・統合」へ424病院名を名指し公表~
このページは2020年4月27日に更新しました。
いま、憲法25条にもとづく社会保障制度の解体がねらわれています。安倍内閣は、「全世代型社会保障」などと言いながら、自助・共助を強調して国の責任(公助)をあいまいにしたうえ、社会保障を大企業が大儲けできるようなしくみに変えようとしています。
こうしたなかの2019年9月26日、厚生労働省は「再編・統合について特に議論が必要」であるとして、全国の公立・公的424病院を名指しして公表しました。これは、地域の事情や特殊性を一切勘案することなく、画一的な基準に基づいたもので、きわめて妥当性を欠いたものと言わざるを得ません。同時に、「地方のことは地方で決める」というあたりまえの原則(地方自治)を無視したという点でも、ことは重大です。
この厚労省の暴挙に対し、全国各地の病院や地方自治体、住民から、「地域にとって必要な病院であり、なくすわけにはいかない」(自治体首長)、「名指し公表の影響で医師・看護師の確保に支障が出ている」(病院関係者)など、多数の批判や反発、不安の声があがっています。
自治労連は全国で、住民のいのちと健康、くらしを守るために、公立・公的病院を守り、もっともっと役割が発揮できるよう、さまざまな人たちと共同して運動に取り組んでいます。
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ニュース
公立・公的424病院への「再検証」要請を撤回し、地域医療の拡充を求める署名(PDF)
+公立・公的424病院への「再検証」要請を撤回し、地域医療の拡充を求める署名
公立・公的424病院に対する「再検証」の要請を白紙撤回し、いつでも・どこでも・誰もが必要な医療が受けられるよう、地域医療を拡充することを求めます。
要請項目
①公立・公的424病院に対する具体的対応方針の「再検証」要請を白紙撤回すること。
②いつでも・どこでも・誰もが必要な医療が受けられるよう地域医療を拡充すること。
+病院名一覧 厚労省が再編の検討を求めた公立・公的病院
厚労省が2019年9月26日、公立・公的病院に具体的対応方針の「再検証」を求める必要があるとして全国424の病院を名指しで公表した問題に対して大きな怒りの声が相次ぎ波紋を呼んでいるもと、自治労連としても「公立公的病院等再編・統合阻止共同行動」(424共同行動)に結集し、再検証リストの白紙撤回を求め、住民のいのちと健康守る公立・公的病院を守る取り組みをすすめています。
(追記)厚生労働省は1月17日、「診療実績データに誤りがあった」として424病院のうち7病院(済生会中央病院(東京)、JA静岡厚生連遠州病院(静岡)、岩国市医師会病院(山口)、徳島県立鳴門病院(徳島)、宗像医師会病院(福岡)、熊本市民病院(熊本)、杵築市立山香病院(大分))をリストから外し、新たに20病院を追加することを発表しました。新たな20病院については混乱の広がりを避けるため、公表しないこととしています。
再編・統合を求められた病院数(県別)
厚労省が再編の検討を求めた公立・公的病院
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+再編対象の病院公表に「厳しい批判」
2019年9月26日の再編対象424病院のリスト公表直後から、全国の病院や自治体の関係者から厳しい批判が上がり、京都府も、厚労省の「一方的発表は遺憾」と表明しました。
総務省が10月4日に開いた国と地方の協議の場では、平井鳥取県知事(全国知事会社保常任委員長)が「本当ならリストを返上してほしい」と述べ、厚労省が10月17日に福岡市で開いた自治体・病院関係者との意見交換会の初会合でも、出席者から「公表データを撤回してほしい」と厳しく反発する声が上がっています。
地域の事情を考慮せずに機械的に決定
今回、名指しされた424病院は、がんや救急医療など、限られた9つの分野の診療実績データを元に、地域や病院の個別事情はいっさい考慮せず、機械的にリストアップされています。
リストアップの基準は、「診療実績が特に少ない」「似たような機能の病院が車で20分以内の所にある」の2つですが、人口10万人未満の地域では「特に少ない」病院が項目によっては9割。「車で20分」も地域によっては季節で一変します。この基準自体そもそも適切とは言えません。
+再編すれば「いのちの格差」はさらに拡大
再編対象はほとんどが地方の中小病院
再編統合の対象にリストアップされた424病院のうち、4分の3は200床未満の中小病院で、7割が区域の人口50万人未満の地方の病院です。さらに、100床未満は8割あまりが再編統合の対象に上げられ、その半数は人口規模20万人未満の区域にあります。地方の中小病院が再編統合の“ターゲット”とされ、特に過疎化の進む地域の小さな病院は、ほとんどが再編対象にされています。
「地方創生」とは真逆の地方切り捨て“町こわし”
「医師不足で困っているのに、対象になった病院に若い医師が来てくれるか。非常に足かせだ」との地方からの厳しい批判―。今回の病院名公表は、住民のいのちと暮らしを守るため、地域医療の確保に奔走してきた関係者の努力を踏みにじるものです。 医療が消えれば、町は人が住めなくなります。民間では採算の取れない人口減少の進む地方だからこそ、公的責任で医療を保障することが必要です。地方創生とは真逆の地方切り捨て“町こわし”につながる公立・公的病院の再編統合はストップさせましょう。