「子ども家庭相談担当職員」の全国交流集会初開催!自治労連社会福祉部会
「市町村・児童相談所等の子ども家庭相談担当職員全国交流集会」が2月27日・28日に愛知県の労働会館にて開催され、全国から子ども家庭相談業務に従事する職員ら86人が参加しました。児童虐待が大きな社会問題になっていることを反映しNHKをはじめマスコミも5社(6人)が取材に訪れました。
児童相談所が対応する児童虐待の対応件数は急増しています(2014年88,931件、この15年で7.6倍)。児童福祉司の数は一定数増えましたが、相談数の増加にまったく追いついておらず、児童相談所職員は極めて厳しい労働環境に追い込まれています。また、虐待対応において初動対応機関として位置付けられている市町村では、担当職員は必ずしも児童福祉を専門に学んだわけではなく、また、相談員の非常勤職員割合が高くなっています。児童の緊急保護を行う一時保護所では、恒常的な施設不足や子どもの教育を受ける権利が保障されないなどの深刻な課題が山積みです。このような状況の下、子どもの権利を守るとりくみを強化していくため、子ども家庭相談の現場の現状を交流し課題を明らかにすることを目的として、自治労連で初めてとなる本集会を開催しました。
集会開会にあたり、自治労連の高柳副委員長が「児童虐待が増加するなか、児童相談所や一時保護所などの職員の過重労働の改善、虐待を受けた児童とその親に対するケアが充分にできる体制を作ることが急務になっている。全国の取り組みを交流し相談体制充実などの運動を進めていきたい。児童虐待の背景にある貧困と格差の解決にとりくんでいきましょう」とあいさつをしました。また、初めての取り組みでもあり愛知での開催となったことを受け、自治労連愛知県本部の伊藤委員長が集会にかけつけ、あいさつをいただきました。その後、自治労連社会福祉部会幹事が基調報告を行い、宮本部会長が厚生労働省要請行動(2016年1月に社会福祉部会が実施)の様子について報告を行いました。
厚労省は、今国会に提出が予定されている児童福祉法改正案作成に向け、「新たな子ども家庭福祉のあり方に関する専門委員会」を2015年9月に立ち上げました。同委員会の委員でワーキンググループの座長を務めた北海道大学大学院の松本伊知朗教授から、「子ども家庭相談をめぐる児童福祉法改正の動向」と題して基調講演を受けました。
講演では、委員会報告案(たたき台)を基に、委員会でどのような議論が交わされたかについて語られました。そして、「児童福祉法改正案が今年3月にも提出される可能性がある。ぜひ専門委員会の議論が法案に反映されているかチェックして、現場から意見を言ってほしい」と述べられました。
パネルディスカッションでは、元名古屋市児童相談所児童福祉司の塚本道夫氏をコーディネーターに、子ども家庭支援センター職員や児童相談所職員、虐待防止専門員・スクールソーシャルワーカーら4人のパネリストが「児童相談所・市町村の職場の体制と役割について」をテーマに討論。一時保護所の宿日直職員が全て嘱託職員である現状や、児童福祉司の時間外労働の劣悪な実態(年間の時間外労働が1700時間以上に及ぶ者もいる)等、虐待増加に追いつかない児相職員の著しい不足や、一時保護所の施設不足、自治体の相談窓口の現状など、児童福祉業務の厳しい実態が報告されました。また集会参加者からも、それぞれの自治体のとりくみ状況や課題について発言があり、児童心理司等の重要性と不足、児童福祉司基準は人口割ではなく持ちケース数を根拠にすべき、児童虐待の背景に貧困の問題があるという視点の重要性、一時保護所の夜間体制は宿直ではなく夜勤で、などといった課題が出されました。
集会2日目の分散会では、3つのグループに分かれて職場の現状や課題、悩み等を議論しました。市と児童相談所はもとより、学校・幼稚園・保育所など地域との連携の在り方や、体制強化に向け今後労働組合としてどのように運動を広げていくべきか等についても話し合われました。
参加者からは、「もっと早くこのような集会を開催してほしかった」「児童相談所・市町村・一時保護所・家庭児童相談など、様々な立場の人と意見交換できたのがよかった」「経験や悩み、大変さ、課題など共有できて有意義だった。職場に帰って業務に役立てたい」「今までたくさんの研修に参加したが一番すばらしかった」などの声が寄せられました。自治労連は、この集会で明らかになった課題について、地域・全国の運動につなげ、全国自治研にも反映するとともに、厚労省への要請を行うなど相談支援体制・一時保護所の拡充を求める運動を引き続き進めていきます。