自治労連公営企業評議会 省庁要請行動が行われる
自治労連公営企業評議会(以下、公企評)は1月13日、東京・衆議院第2議員会館において省庁要請行動を行い、36人の参加で総務省、国土交通省(水行政、公営バス事業)、厚生労働省(水行政、公営バス事業)、経済産業省(公営電気事業、水行政)、環境省、農林水産省の6省庁9部門に対して要請行動を行いました。
総務省 「委託先労働者の雇用・労働条件への配慮は必要」と回答
総務省は、総論として、「要請の趣旨は、公営企業の運営を支えていくというものであり、私たちと目的は同じととらえている」と述べ、次の回答を行いました。
①住民本位であり続けていくための改革が必要と考えており、民間ノウハウの活用は必要。地方公営企業には適正な運用に留意するよう求めている。
②「料金等の支払いが困難な生活困窮者に対する減免措置」などの対策については、生活保護等の制度があり、公営企業に対する特別な補助は困難である。減免制度は地方公営企業側の裁量であり、不納欠損等に対する財政支援は、公営企業側の料金徴収に対する意欲をそぐことになる。
③委託先労働者の雇用継続、賃金労働条件改善については、「平成27年8月付け通知」の徹底をはかり、「委託先の事業者が労働法令の遵守や雇用・労働条件への適切な配慮がなされるよう留意すること。」など適切な管理運用ができるよう助言を行っている。
公企評から「上下水道でコンセッションを実施しようとしている事業体は、一部を除けば財政基盤も脆弱なところがほとんどであり、第三セクターの塗り直しのような計画となっている」と追及しました。
総務省は、「完全民営化は無理と考えている。まずは、水道事業のOBが従業員として多数在籍する会社を設立していかなければ適切に業務は出来ないと考えている」と回答、強引な上下水道のコンセッション募集の内実が露呈することとなりました。
国土交通省(水行政) 地方下水道へのコンセッション導入は、第二のJR北海道化
コンセッションの計画は、奈良市では赤字地域のみを切り離して実施を計画、また、三浦市のような経費回収率が33%などという財政基盤の脆弱な自治体が検討をしており、その上、市と共同出資、役員の天下り、一般会計からの基準外繰入も継続という計画は、「純民間として立ち上げた仙台空港と比較してもおかしいのではないのか?」「第三セクターと何がちがうのか?」「強引な民営化を進めれば第二のJR北海道を生み出しかねない」と問いました。
これに対し、「そこは国の中でも議論をしている、事業ごとのニーズに応じて『うまく使えるところは使ってください』という趣旨でやっている。空港のような方法は下水で当てはまるかは難しいと思っている」と、下水道事業が民間資本のいいとこ取りになる可能性を否定しませんでした。
総務省や経産省が事業体に海外進出をけしかける中で、自治体が地元住民を顧みない状況が全国に広がっており、地元住民へのサービスもやりきれない事業体が、「海外に職員を派遣して水ビジネスをやる」と言っている。
「下水道法第一条の『都市の健全なる発達及び公衆の保全に寄与し』という本来の仕事をやってから(水ビジネスを)しなさい」と、国交省は「ブレーキをかけるべきではないか」と申し入れました。
これらの指摘に対して国交省の職員からも苦笑が漏れる雰囲気となりましたが、国交省側は「下水道法に基づいて事業を持続的に継続してもらうということは言うまでもなく、優先順位としては高い、その中で独自に持っている技術を海外にというニーズがあれば支援していくことはしていくべき」と回答しました。
厚労省(水行政) 広域化・官民連携が「唯一の解決策」ではないはず
冒頭、公企評は「水道法改正の動きがあるが、福祉目的である水道事業の変質を危惧している」ことを伝えました。厚生労働省は「水道事業の持続性・安全性を第一として広域化と官民連携を進めるが、コンセッション方式導入は選択肢の一つであり、導入も可能な法整備を考えている」との考えを示しました。
公企評は、水道広域化では、貴重な自己水源を放棄してダム水源に一元化することで給水原価が上がる事例や、簡易水道統合では統合を終えた事業体が経営難となっている事例をとりあげ、「水道法改正議論にもある県主導による広域化推進は疑問だ」と訴えました。
厚労省は「各自治体の判断を尊重してすすめる」と答えていますが、公企評は「人員削減により技術者が不足し、地域水道の将来計画を建てられないのではないか?このままではコンサル丸投げにならないか?」と指摘しました。
大阪においてはコンセッション方式による水道民営化について多くの疑問の声があることを伝えましたが、厚労省は「選択枝の一つであり各事業体の判断」という答えを繰り返しました。
公企評は、「災害時支援には中核的都市が重要な役割を果たしてきたが、このようなことを進めれば応援体制が崩壊する」「災害時に民間企業を公営企業が支援するのは人道的には理解できるが公平性が保たれない」「また、先の熊本地震では小規模事業体が災害支援を財政負担の大きさから断った例があると聞いている。そのような実態を調査してもらいたい」などと訴えました。
経産省(水行政) 長期化する下水道事業での放射能汚泥の実情を訴える
自治体に委ねられた8000ベクレル以下の廃棄物のうち、下水道事業で蓄積されている放射能汚泥の実情(横浜市)を伝え、経産省が責任をもって賠償が進むよう努力することを要請しました。
経産省は、特措法外のものについては「現時点ではお答えできない」と答えましたが、公企評からは、「基準を作ったとき、国もこれほど長期化し蓄積されると想定してないのではないか?事業体の財政負担も大きく柔軟な対応をお願いしたい」と伝えました。
「工業用水事業でのコンセッション導入要望はあるか?」の質問に対して、経産省は「是非という声はあるが、管路などにリスクがない、利潤がでるなど企業活動の条件が整うことが前提である」と答えました。
公企評として、これらの条件を満たすためには、「事業体の負担などで設備更新した上で民間に渡してしまうのではないかと危惧している」と伝えました。
また、水循環基本計画には水循環基本法の趣旨とは相容れない「水ビジネス」という文言があるが、「水は公共の財産であることを念頭に企業活動が行われるよう経産省として努力してもらいたい」と訴えました。
環境省 水源地での産廃処分場の立地規制を検討
「水道水源を含む水環境に著しい負荷を与える産業廃棄物が適正に処分されるように公的関与を強めること」との要望、ならびに住民の不安の大きい水源周辺の最終処分場の問題は、「立地規制については、これまでの事例を踏まえて、都道府県の意見も聞きながら検討していきたい」と回答しました。
近畿公企評からは、「汚水処理施設をつくれば安心というものではなく、適切な管理運用ができないと効果を発揮しない。常時監視を自治体に義務付けるなどの措置が必要」と追及したところ、環境省は、「自治体には厳しく審査を行うよう助言している」との回答がありました。
農水省 健全な水循環回復にお互い努力
農水省では、水源の森林保護のため林業従事者を増加させる施策や国内産木材使用のための施策、地下水の涵養ため「冬期水田湛水」をとりくんでいる大野市の事例など、農山村地域での水環境へのとりくみについて意見交換を行いました。
農水省からは「H14年に最低だった林業従事者は上昇に転じているが、省力・機械化や販路確保など引き続き安定化のための施策をつづけたい」と回答がありました。
公企評は「地方活性化と健全な水循環の回復には、国の基盤である農林業の振興が重要であり、さらなる予算拡充を望んでいる」ことを農水省に伝えました。
また、農水省は「新規ダムの建設はしない」立場に立っているため、公企評からは「耐用年数を迎える農水ダム撤去ルールを他の省庁に先駆けて検討していただきたい」と訴えるとともに、「自然再生法(H14)と水循環基本法の趣旨に基づき、具体的政策の推進に農水省が強く関わることを期待する」とエールを送りました。
経産省(電力) 「望ましい電源構成(ベストミックス)はいいかげん?」 ~あまりにも無責任な原発政策~
今回の要請にあたって、新基準に適合した原発の安全性について原子力規制委員会に質問をしたところ、新基準は「『現在考え得る最高水準』の安全基準であり、将来技術が向上すれば、さらにハードルの上がった安全基準に改正される」、再稼働の可否については「新基準に適合しているかどうかの判断であって、決して絶対安全とは言っていない」と明言しました。
要請行動で経産省にそのことを問いただすと、「確かに絶対安全とは言い切れない」と肯定し、更に現在考え得る最高水準の規制は満足したが、「再稼働するか否かは原発がある地元の判断だ」と矛先をかわしました。
政府が一昨年決定した2030年度の望ましい電源構成(ベストミックス)では、老朽原発の稼働延長を前提にしてむりやり原子力の比率は20~22%としています。「老朽原発の延命稼働で『世界最高水準』の新基準がクリアできるのか?」「原発再稼働ありきの出来レースではないのか?」と追及しました。
これに対して経産省は、「この数字はベース電源としての原発がこれくらい欲しいという全体のバランスを考慮した数字で、特に原発の再稼働ありきとしての具体的なことを考えているわけではない」と苦しい答弁を行いました。
私たちは、「将来の具体的なエネルギー施策も考えずに日本の望ましい電源構成(ベストミックス)は作れない」との立場で経産省に改めて見直しを求めました。
要請行動には、日本共産党・山添拓参議院議員、梅村さえこ衆議院議員が参加、また、穀田恵二衆議院議員、田村貴昭衆議院議員、山下芳生参議院議員、吉良よし子参議院議員の秘書のみなさんが同席されました。