介護現場の職員と事業所を支える施策を求め厚生労働省へ要請
自治労連は、8月17日、厚生労働省に対し、全国各地で高齢者施設などでのクラスターも発生する中、介護現場の職員と事業所を支える施策を求める緊急要請書の提出を行いました。自治労連からは高柳副委員長、長坂副委員長、小泉中執、介護対策委員会から實川委員(千葉県本部書記長)、小高書記が参加し、厚生労働省からは老健局・社会援護局から6名が対応しました。
冒頭に高柳副委員長が「新型コロナウイルスの感染が収束するどころか拡大する中で、国民のいのちを守るため現場では試行錯誤しながら奮闘している。住んでいる場所によっていのちの格差が生まれてはならない。住民のいのちとくらしを支えるためには安心して働ける環境づくりが必要だ」とあいさつし、7項目について要請しました。
≪要請項目と厚労省の主な回答≫
1.新型コロナウイルス感染症拡大のもとで、介護事業所の運営や財政の状況、介護労働者の休業や現場の実態について厚生労働省として早急に調査・把握し、国の責任で、改善のための対策を実施すること。
(厚労省)衛生用品などの物品購入、不足する人員を確保するための人件費など、本来発生することのなかった様々な経費について第一次・第二次補正予算において補填することにしている。
2.それぞれ利用者に必要な介護サービスが提供できなくなることがないよう、国の責任で感染症拡大防止対策を徹底すること。具体的には、国が衛生用品・物資の購入費用等についての財政的な支援を行うとともに、飛沫・接触感染防止のための物資や体温計(電池含む)など、現在不足がちになっている物品について、国の責任で確保し、安心して介護サービスが提供できる体制を整備すること。また、防護資材があっても、適切に使いこなせなければ感染リスクは下げられないため、講習や指導の機会等を設けるなどして、介護現場の防護スキルの向上を支援すること。
(厚労省)感染が発生した介護施設等への対応として必要な防護具等すみやかに供給できるよう国で購入して都道府県に配布している。また、都道府県や介護施設が衛生防護用品を購入する場合の費用の補助を行い、感染症対策のために必要な助成を行っている。防護スキルの向上について、感染マニュアルの作成、実地の指導のための必要な経費を計上している。
3.PCR検査を必要とする介護サービスの利用者および介護労働者に対し、簡単で、すみやかに検査を実施する体制を整備すること。また、検査にかかる費用を全額、国が負担すること。
(厚労省)医師が必要と判断した方や症状の有無にかかわらず濃厚接触者の方が確実に検査を受けられるようにすることが重要。感染が疑われる場合は率先して検査を行うこととしている。感染拡大を最小化するために、利用者に負担がないよう行政検査を積極的に行うことが重要。
4.介護労働者のいのちと健康を守り、感染症拡大などの非常時においても介護サービスの提供を維持することができるよう、介護職員の人員配置基準の改善と、介護労働者の大幅な増員を早急に実現すること。また、新型コロナ感染症拡大によって2020年秋以降に集中する要介護認定調査・認定審査会事務を遅滞なく実施するために、人員体制等を強化するなどの措置を講ずること。
(厚労省)人員配置基準についてはあくまでも都道府県や市町村が条例において最低の基準を設けたもの。その上で利用者の実態、各施設の希望や状況において弾力的に人員配置を行うことが可能で、職員配置を手厚くすることも可能。
5.2020年度第二次補正予算の「新型コロナウイルス感染症緊急包括支援金」による支援をすみやかに行うこと。また、介護・障害分野の労働者への慰労金については、すみやかに給付するために、簡易な申請とすること。
(厚労省)介護分野については7都道府県ですでに申請の準備が整っていると聞いている。今後も各都道府県には必要な指導を行っていきたい。
6.介護報酬の引き上げについては、利用者負担を増やすことなく、国の責任で財政措置すること。
(厚労省)介護報酬の引き上げについては社保審介護給付費分科会で議論をしていただいているところ。必要な人に必要なサービスを提供されるように検討していきたい。
7.新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う介護事業所の休業や利用者減による減収、介護労働者の賃金の減少分を、国の責任で補填すること。その際、国の財政的な支援措置を大幅に拡充し、利用者の負担増とならないようにすること。
(厚労省)承ったご意見を参考に必要な対応を検討していきたい。
要請では事前に介護対策委員を中心に現場の声を伺い、厚労省に伝えました。
〇厚生労働省が介護の現場の実態をきちんとつかんでおらず、対応が不十分で、現場の実態に即していない。現場の声をつかむ工夫は具体的にどのようなことを行っているのか。例えば全国介護事業者連盟が介護事業者の実態調査を行っており、廃業となってしまったり、コロナを理由に仕事を辞めてしまったりする人が増えている。医療だけでなく介護の崩壊についても危機感を持っている。こうした現場の実態を受け止めて改善を検討してもらいたい。
〇入手が困難になっている衛生用品・物資はまだ多い。国・厚労省は、購入のための費用を出すというだけでなく、現場にきちんと供給できるよう、各方面とも連携して対策を強めてほしい。
〇利用者数が落ち込んだり、車利用のためのガソリン代など感染拡大防止のための経費が増えたりして大幅な減収になっている。高すぎる利用料をさらに増やすことなく将来にわたって国が責任を果たすことが必要。
〇千葉では昨年台風災害を経験して、訪問すべき職員が訪問できないなどの状況もあった。いつどこで同じ状況が起こってもおかしくない。これまでの経験を教訓にして対策を行ってほしい。
〇慰労金について、公務では議会との関係で10月以降の給付になる可能性がある。遅すぎる。すみやかに申請・給付の手続きができるような仕組みにしてほしい。
最後に高柳副委員長が、「介護現場では通常時でも人員不足の状況がある。利用者が安心して介護を受けられるために現場の声をぜひいかしていただきたい」と強調しました。