「学校図書館法の一部を改正する法律案(仮称)骨子案」についての見解
「学校図書館法の一部を改正する法律案(仮称)骨子案」についての見解
2014年4月
≪見解の概要≫
2013年6月に、衆議院法制局から示された「学校図書館法の一部を改正する法律案(仮称)骨子案」は、専任・専門・正規雇用の学校司書の配置を求める内容となっていない。これでは、「非正規・無資格・複数校兼務の学校司書配置」を固定化させ、現在の学校司書の配置水準を後退させるおそれがある。学校司書の専任・専門・正規雇用の保障ができない法制化はすべきでない。
≪見解の理由≫
1.学校司書の役割
学校司書は、学校図書館において多様な資料を収集し提供する、資料と資料提供の専門職員である。子どもたちの、日常的な知りたい・読みたい気持ちに応え、授業に関連した調べ方のガイダンスを行ったり、教師とともに学校図書館を使った授業を行ったりする。こうした学校図書館活動を行うことで、知る自由を保障し、教育を豊かにする。情報を読み解き、理解する力、調べ・考え・創造する力の育成が求められている今、上記のような学校司書の役割は極めて重要になっている。
2.学校司書の配置の現状
小・中学校の学校司書の配置は、自ら学ぶ子どもの育成に学校図書館の働きが欠かせないとして、学校現場や自治体の努力、住民の運動によって長年にわたって進められてきたものである。その結果、配置数が年々増え、全国の小・中学校の約半数に配置されている。
しかし、雇用については、さまざまな職名による非正規職員での雇用が多く、雇い止め事例も発生している。
学校司書の専任と兼任、正規と非正規配置における学校図書館の様子を比べると、子どもの貸出冊数や利用、授業での活用において、明らかな差が出ている。教育の格差が生じていることは問題であり、どの学校にも学校司書が常駐し、子どもたちがいつでも利用できる学校図書館が求められている。また、そのことは教職員や保護者、国民の願いでもある。
3.学校図書館法の一部を改正する法律案(仮称)骨子案
2013年6月に、衆議院法制局が示した「骨子案」は、
一 学校司書
1 学校には、司書教諭のほか、児童又は生徒及び教員による学校図書館の利用の一層の促進を図るため、専ら学校図書館の職務に従事する職員(2において「学校司書」という。)を置くよう努めなければならないこと。
2 国及び地方公共団体は、学校司書の資質の向上を図るため、研修の実施その他の必要な措置を講ずるよう努めなければならないこと。
二 施行期日
この法律は、〇〇〇から施行すること。
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としている。
これの問題点は、下記の通りである。
第1に、すべての学校に学校司書配置が保障されていない。1校1名の配置の保障がなく、複数校兼務になるおそれがある。
第2に、学校司書の専門性に関して、司書資格の明記がない。これでは今後、学校司書を無資格で配置することも認めることになり、学校図書館を機能させることができない。
第3に、学校図書館の設置者による正規雇用の保障がない。これでは、派遣職員やアルバイト・パートなど、非正規の学校司書を生じさせることになりかねない。
4.求められている制度・政策
(1)すべての学校に専任で専門の学校司書配置を
学校司書が常駐している学校図書館では、子どもたちがいつも読書や調べ学習に活用し、主体的に学ぶ授業も増えている。全国どこに住んでいても、子どもたちは同じように学校図書館を利用でき、図書館を活用した教育を受けられるようにすべきである。学校間格差が広がらないように、すべての学校に、1校1名で専任・専門の学校司書配置は欠かせない。
(2)学校司書には、司書資格が必要
学校図書館を活用した授業が増え、情報リテラシーの育成が重要視されている中、的確な資料の提供やアドバイスを行うには、図書館の機能や理念を学んでいる司書資格を有した学校司書が必要である。学校司書は学校教育の動きを把握し、子どもたちの自主的な読書・学習意欲を高めるような資料紹介をし、活用方法を伝え、教師とともに主体的な学びのできる授業をすすめ、求められた資料は他の図書館と協力し届けるという役割を果たしている。こうした働きができるためには、司書資格を基盤にした専門的力量が必要である。
なお、司書資格が無い職員が配置されている自治体については、司書資格の取得の援助、経過措置を設けるなど、雇用の喪失につながらない配慮が必要である。
(3)学校司書にはフルタイムで、常勤で任期の定めのない雇用が必要
いつでも活用できる学校図書館であるためには、学校教育に必要な資料を継続して収集して蔵書を形成し、常に子どもの育ちや学校教育に求められる資料・情報を届けていく働きが欠かせない。そのためには、学校司書としての経験と研修の積み重ねが必要であり、継続的な正規雇用であることが、きわめて重要である。
以上