厚生労働省へ「エボラ出血熱感染対策」問題で緊急要請
12月9日(火)、厚生労働省に対して「エボラ出血熱感染対策」問題で緊急要請を医療3単産(自治労連、医労連、全大教)の取り組みとして行いました。
自治労連からは福島功副委員長、池尾正医療部会議長、石原昭彦公衆衛生部会部会長など8名、医労連からは三浦宜子書記長、森田しのぶ全日赤委員長、綿引美佳全医労・国際医療センター支部長など5名、全大教からは長谷川信全大教病院協議会幹事、総勢14名で、厚生労働省の健康局結核感染症課係長、健康局結核感染症課新型インフルエンザ対策推進室主査へ「要請書」を渡し、現場の実態を訴え、情報提供、現場でのマニュアル作成、研修・シミュレーション訓練の実施、必要な予算措置などについて要請を行いました。
要請にあたり、福島副委員長から、現在総選挙が行われているが、総選挙が終われば補正予算、来年度予算編成に入ると思うが、そこに反映できるものもあると思う。課題はたくさんあるが、今日は緊急の要請で課題を絞っての要請なので、現場の実態・不安の声を聞いてもらいたいと挨拶がありました。
2014年12月9日
厚生労働大臣 塩崎 泰久 様
日本自治体労働組合総連合
中央執行委員長 野村 幸裕
日本医療労働組合連合会
中央執行委員長 中野 千香子
全国大学高専教職員組合
中央執行委員長 中嶋 哲彦
エボラ出血熱感染対策に係る要請書
日々、厚生労働行政に専心されている貴職の御活躍に敬意を表します。
西アフリカ諸国で起こっているエボラ出血熱の流行は深刻化しており、日本においても流行国からの帰国者に対する検疫を強化するなど水際での対策が講じられています。しかし、検疫の強化にもかかわらず、国内で感染が疑われる患者が発生し、さらには、直接医療機関を受診するなどの事態が生じています。各自治体及び診療所も含む医療機関等での適切な対応のための体制整備が急務です。
住民及び従事する職員への感染防止に万全を期すため、下記について要請いたします。
1 エボラ出血熱感染対応について、国民に対し正確な知識・情報の提供、相談、検疫、移送、感染対策等に万全を期すこと。
2 専門知識や対応について、自治体への十分な情報提供を徹底すること。
3 必要な物品や設備にかかる費用は、補助金で対応し各自治体に交付すること。
4 医療機関への対応について
(1)検疫を強化してもなお感染者が入国し、かつ、診療所を含む医療機関等を直接受診する可能性があることが事例により明らかになっている。「エボラ出血熱の国内発生を想定した医療機関における基本的な対応について(依頼)」(2014年10月24日厚生労働省健康局結核感染症課長通知)の徹底を、医療機関のみでなく全国民にあらゆる手段を講じて早急に周知し感染を防止すること。また、周知が徹底されていることを確認すること。
(2)特定又は第一種感染症指定医療機関以外の医療機関に対しても、エボラ出血熱の疑似患者が受診した場合を想定した院内感染防止、医療従事者や患者の安全確保等のため、早急に医療従事者に向けたエボラ出血熱対策の新ガイドラインを発行すること。また、新ガイドラインに基づき対応するうえでの人員、体制および必要な施設改修等に必要な費用について、国として補正予算を組むこと。
(3)特定感染症指定医療機関(3医療機関・8床)、第一種感染症指定医療機関(44医療機関・84床)について、国として次のような対応をすること。
1)エボラ出血熱対応マニュアルの作成や人員体制の確保及び感染予防の適合性について早急に国として立ち入り調査を実施し、対策が不十分な医療機関については早急に改善を求め、改善対策が早急にできるよう、人件費等含めて国として最大限の協力を行うこと。
2)感染防護服等含め感染防止用品等についての準備についても早急に確認を行い、不十分な医療機関については国として補正予算を組んで揃えるようにすること。
3)エボラ出血熱患者受入のシミュレーション訓練や感染防護服の着脱訓練などを早急に行うよう指示し、国として最大限の協力を行うこと。
4)各自治体及び医療機関等で定められた手当は、エボラ出血熱等生命にかかわる重大な感染症を想定していないのが現状であり、現状に合った手当額に改定するよう、関係機関に指導すること。
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【回答】
・1と2については、情報提供はホームページになるべく詳細に厚生労働大臣のメッセージも入れて行っている。Q&Aや自治体向けの情報など、誰にでも見られるように広く情報発信を行っている。11月13日に担当課長会議を開催し、感染者が発生した場合の対応についても意見交換も行った。同日に検疫分野も会見を実施した。11月21日付で行政機関の対応についても通知文書を発信した。今後も通知、事務連絡などで国と自治体との連携強化をすすめていきたい。
・3については、まず個人防護服が必要になってくる。第一種感染症指定医療機関、保健所に配備できるよう補正予算への計上を調整している。またアイソレーターについては既存の負担金で対応できるので、自治体に聞き取りをおこなっている。
・4の(1)については、町田市での発生したような例もあるので、医師会と共同でパンフを作成し周知をはかっている。医療機関・自治体においても活用いただき、広く周知いただきたい。
・4の(2)ガイドラインについては、国際感染症センターで、研究班が市ヶ谷会場で研修会を実施し、年内に全国15か所を回って研修を行ってもらっている。またエボラ出血熱対応の準備に役立つ『ウイルス性出血熱-診療の手引き-』を作成したので参考にしてほしい。
・4の(3)については、未設置県が7県ある。青森については2015年4月までには開設予定である。未設置県に対しては整備の要請と補正予算の対策をはかっている。
・1)について、マニュアルについては国際医療センターのホームページで対応している。人員については都道府県を通じて体制確認を実施した。個人防護服の整備状況。国のサポートは必要だが受け入れ体制は整えられている。研究班の研修を通じて対応している。
・2)について、補正予算での対応を調整している。
・3)について、11月13日の全国会議で都道府県に対してシミュレーション作成を要請して、作成がされている。受入・着脱訓練についても11月中の実施、遅くとも年内実施を要請している。
・4)について、手当については医療機関ごとになるので、国からいえることはなかなかない。運営費を交付しているので、引き続き運営費で支援していきたい。自治体における特殊勤務手当については、人事院の管轄になる。自治体が支払ったものについては運営費で交付する対応となる。
【参加者からの発言】
・成田の日赤病院では、感染症病棟のみ毎日着脱訓練をしているが、感染の疑いのある人がすべて感染症病棟に来るという訳ではなく、風邪と思って受診したらエボラということも想定される。一般病棟や救急病棟などで最初に受け入れる場合もあるが、そういったことに対する情報発信が不十分だと思う。現場は不安でいっぱい。21日間の潜伏期間についても、病気がよくわからないため2日~21日とされているが、本当は1か月だってあるのではとの声もある。また感染者の看護にあたった者は他の患者とは接触できないことに事になっており、監禁され帰宅できないのではないかとの不安もある。感染者が発生した場合アルガンという薬を治験するようにとのことだが、医師が拒否した場合に誰がやるのかとの不安の声もある。
・国際医療センターでは、今回3名を受け入れた。医師は部署としてあるが看護師は普段は通常勤務をしている。感染症病棟が開かれると突然そこに人を持っていかれ、職場はどうなるのか。インフルの時にも開いたが職場はたいへんだった。危険手当もあるが実働のみ支給だ。個人防護服も費用がかかるが、設備を維持するだけでかなりのコストがかかる。マスコミ対策もしっかりとしてもらいたい。一般患者にたいする安心の看護が守れない。
・医師・看護師が不足している状況の中、感染症病棟を開くために他の病棟を閉鎖しなければいけない状況にある病院もあることを知ってほしい。人の配置の問題だ。病院としてやるのと同時に国としてのコントロールも必要だと感じる。医療器材の対応についても、感染者に使用した機材は他の患者には使用できないことになっているが、高額な検査機器がそうなった場合の対策を検討してほしい。
・池尾議長からは、未設置県で患者が発生した場合にはどう対応するのか。シミュレーションがあれば教えてほしい。防護服を着てどれくらいの時間いれるのか。着脱訓練も実施しているが、着脱時にミスしてしまったら。防護服の在庫がなかったらなど様々な不安がある。たとえば該当地域への渡航歴はないが、渡航歴のある人と海外で接触していた場合はどうなるのかという問題もある。オーストラリアのような厳しい水際対策が必要。第一種感染症指定医療機関以外の医療機関にも徹底をはかるよう対策を。
・特別に参加をいただいた都庁職病院支部の大利さんからは、都立病院に3つの病院で受け入れ病床がある。アメリカでは先進国の医療水準では重症化しないとの考えもあるが、日本の看護職場の労働実態はひどいものがある。16時間夜勤など、勤務終了時にはミスしたことさえ忘れてしまうような状況がある。マニュアル通りに着脱訓練を実施したが、グリッターバグ(手洗い)の検証では、防護服の下の白衣に蛍光塗料がついていることがわかった。そのため不安もあり、心のケアも必要と考えられるので配慮してほしい。
・石原部会長からは、ホームページの情報も意識的に見る人には入ってくるが、国民全体に対して、きちんとした対応をしていれば安心なんだと訴えるものが必要。入口は保健所になるので、職員には接触して二次感染する恐れもあるという不安もある。全国の自治体に対して正確に情報発信をしてほしい。エボラだけでなく危険が増えている。交付金だと意味合いがうすまってしまうので、補助金の形で支援をお願いしたい。
参加者からの発言を受けて、厚生労働省からは、特定感染症指定医療機関に対しては、1床あたり年間750万円前後、第一種感染症指定医療機関に対しては、1床あたり年間450万から460万円が交付金として交付されている。勤務実態については国際医療センターについては聞いていた。看護師不足問題については、一般的に不足状態が発生しておりエボラに特化して看護師を確保しろでは難しい。未設置県で患者が発生した場合の対応は近隣の搬送を考えている。一般の方に対するアナウンスは、海外便では機内で全便アナウンス、空港内ではアナウンスや掲示物での情報提供をおこなっている。などの回答がありました。
最後に、医労連の三浦書記長が厚生労働省に対して、情報の周知徹底をお願いしたい。現場では人員不足が深刻な状況にある。労働実態を把握し危機管理ができる体制作りが必要。財政的な問題は自治体や医療機関任せにせず、国が責任を持って行うようまとめの発言を行い要請を終了しました。