地域医療と公立病院の充実を求める
1.26 医療関係府省・団体要請・懇談
1月25日、18地方組織から63名の参加で8回目を迎える「いのちと地域を守る学習・意思統一集会」を開催し、医師不足と地方財政危機、政府の社会保障費削減を中心にした医療費抑制政策のもとですすむ、自治体病院と地域医療の深刻な危機の中で自治労連が進めてきたいのちと地域を守る運動を継承し、全国の取り組みを大きく進めるための意思統一をはかり、翌26日の医療関係府省・団体への要請・懇談行動に取り組みました。各府省・団体との要請・懇談の概要は下記の通りです。
【総務省】経営形態の変更は、自治体が決めることと責任逃れの総務省
松繁副委員長ら11名は総務省に対する要請行動を行い、自治財政局調整課の社会保障制度係長ら3名が対応しました。「公立病院改革プラン」による、経営形態の変更や再編で、地域で役割を発揮する公立病院つぶしがすすんでいること、2015年度予算を見ても、公立病院つぶしを誘導するものになっていることへの自治労連からの指摘に対して、経営形態の見直しは、切り捨てではなく、良質な医療を確保し、決めるのは自治体であるとの責任放棄の回答がされました。また、「医療分野の『雇用の質』向上の通知」に基づき、自治体病院でも「向上政策」を講じる要望に対しては、関係省庁と相談しながら進めるとし、主体的に総務省として取り組む姿勢は示しませんでした。
総務省は、「地域において必要な医療を提供できるように交付税は前年同程度は確保」「新ガイドラインは本年3月までに見直し。それに基づき公立病院改革実施を」「医師・医療確保は都道府県や後期研修の奨学金貸与の交付措置、女医確保のための院内保育所設置への交付措置、医療改革推進法に基づく地域医療総合確保基金の設置など3点にとりくんでいる」などの回答がありました。
京都の参加者からは、指定管理の成功例と紹介された新大江病院では、医師が5名から2名まで落ち込み破たん、結局は公立病院に戻すという事態になったことを紹介しながら、総務省が現場や地域の要望を聞かずに結局は病院つぶしを推進するのはおかしいとの点をただし、毎年公表する経営形態見直しの際に、こうした例も公表すべきだと要請しました。
奈良の参加者からは、経営形態見直しによる独立行政法人化が進み、産科がある公立病院が1つしかなくなってしまい地域の医療不安が高まっていること。また、女医の働きやすい職場づくりというが、24時間当直勤務を見直さなければ働けないと指摘しました。
愛媛の参加者からは、看護師の過酷勤務の実態が変わっておらず、厚生労働省まかせにせず総務省としての対応・対策するべきだと求めました。
【厚生労働省】自治労連から15名が参加
要請書の提出にあたり、福島副委員長は、昨年成立した「医療介護総合法」の問題点をあげて、今後さらに地域医療の確保や医療費抑制体制がすすむのではないか、医療現場の多忙化も進行するのではないかと危惧している。と主張し、回答を求めました。
要請項目に対し厚生労働省は、①「職場づくり、人づくり、ネットワークづくりの推進」の検証と効果、勤務条件改善策と人員確保、離職防止対策については、府県の支援センターは、12県等で設置、年度内に25県に拡大される。好事例について、ウェブサイトで公開し、投稿もできるようにしている。潜在化を防止するため、退職時の登録と復職支援などを準備している。②職場での労働基準法違反は、厳しく対処することについては、法違反は、是正指導を行う。③都道府県に交付された「地域医療介護総合確保基金」については、府県から計画を立て、地域事情で活用をはかる。④検討している「非営利ホールディングカンパニー型法人制度」については、医療法人の分化をすすめるツールで営利目的は参加できない。などとの回答がありました。
自治労連から昨年11月に実施した「看護職員の労働実態アンケート」の「中間報告」の結果から1年前より仕事量が増えていること、サービス残業が多いこと、有休取得が少ないこと、上司からのパワハラが多いこと、仕事を辞めたいと思うが8割以上であったこと等その特徴点が報告され、全国から参加した皆さんからは、「アンケート」結果に示された現場の声として「休憩時間を保障しないで働かせていること」「心身疲労を訴えても仕事を優先するように言われること」「16時間の長時間夜勤が改善されていないこと」「夜勤回数も増えていること」などについて、また地域医療確保については「公立病院の役割の中で廃止や統合にすすまないようにひきつづき確保すること」を主張しました。
【全国自治体病院協議会】自治労連から8名が参加
はじめに自治労連本部・田川副委員長より、前日に開催された地域医療と公立病院の充実を求める「いのちと地域を守る学習・意思統一集会」について説明を行い、全国自治体病院協議会の高橋事務局長より協議会の役割と現状が話さました。
医療部会の池尾議長の進行により、医療介護総合法は自治体病院にとって厳しい内容であるとの共通認識に立ち意見交換を行ないました。高橋事務局長からは、「全国7ブロックで共通テーマである医療提供体制と自治体病院の役割については、機能分担で病床整理していく等は大きな流れの中ではやむをえないとの意見が出た」「7対1に関しては、病院がこぞって取得に集中し現場の看護師にとっては厳しい実情となってしまった」「これに関して邉見会長は最初から病棟単位にする必要があったと話されていた」こと等が語られました。
現場からは日勤勤務者が1日8時間労働であるにも関わらず、三交替の日勤深夜の労働時間の問題から二交替の13~16時間にわたる長時間労働夜勤は労働基準法からも違法であるし、基本的には8時間労働を考慮して勤務環境を整えていく必要性を訴えました。
自治体病院としては地域の健康を守る役割があり、民間病院を含めて考えていき、民間で出来ない部分の医療を自治体病院が担うといった役割分担をしていく必要がある。自治体病院は看護師のみならず医師やコメディカルの労働環境についても何らかの措置が必要で診療報酬に反映していく等の方向性も見えている。今後自治体病院の役割としては地域住民の健康に関わる中心的役割を担い民間の病院との連携で地域に根ざした病院づくりに努めていく意思をお互いに確認しました。
【日本看護協会】自治労連から19名が参加
懇談にあたり自治労連本部・福島副委員長が、自治労連が実施した看護職員の労働実態アンケートに触れてあいさつし、続いて高柳専門委員からアンケートの中間集約について資料をもとに報告し、日本看護協会からは、「病院勤務の看護職の賃金に関する調査報告書」と2013年3月に公表した「看護職の夜勤・交代制勤務に関するガイドライン」について、「2014年1~2月に実施した病院単位の認知状況をみると95%が知っていると回答」「勤務編成の基準は11項目できているが2交替・3交替が一緒ではない」「夜勤の1時間休憩は81%ができているが、全体として勤務体制によって得手、不得手がある」「三交替制勤務では勤務と勤務の間隔を11時間以上あけることが難しい状況にあり正循環できていないところが多い」「二交替制勤務では勤務の拘束時間を13時間以内とするは僅か13%、予定なしが48%でハードルが高いが僅かずつ普及している」などの報告を受け、懇談・意見交換を行ないました。
意見交換の中では、自治労連が実施した看護職員の労働実態アンケートでも明らかになったように、仕事に対する思いでは看護職の多くはやりがいを感じているが、人手不足の中で労働環境が悪化し、慢性的な疲労状態を抱える中での勤務を強いられ、仕事を辞めたいと思ったことがあるかとの問いに対しては、多くの看護職がいつも思う・ときどき思うという状況にあることなどの認識の一致を確認し、看護職が働き続けられる労働環境・労働条件の一日も早い実現に向けて、お互いの一致点について更なる努力を重ねていくことを確認して懇談を終えました。