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介護対策委員会が岩手県沿岸部の被災地を訪問
介護制度の拡充にむけた懇談・聴き取りを実施

 2月10日~11日に自治労連介護対策委員会は、岩手自治労連の協力を得て東日本大震災から間もなimage007く丸4年を迎える岩手県沿岸部を訪問し、介護制度の拡充にむけた懇談・聴き取り、被災地視察を実施しました。

今回の訪問は、①前回の被災地訪問から3年を経る中、改めて被災地の実態を把握し、これからの介護制度の拡充に向けた運動につなげる。②介護制度が大きく改悪される中で住民のみなさんの介護をめぐる実態を把握し切実な声を聴く場とし「支え続けたい利用者・家族の100の事例」の取り組みにいかす。③被災地で働く介護労働者のみなさんの声や要求を聞く場とし交流をはかる。④これらを通じて新たな状況の中での「自治労連介護政策案」づくりをめざすことを目的として実施されたものです。

 陸前高田市との懇談

 2月10日、陸前高田市役所を訪問し、以下の7点について聴き取り・意見交換を実施ました。①避難者の状況について ②第5期介護保険事業計画の概要と進捗状況について ③第6期介護保険4事業計画の概要及び特徴 ④日常生活支援総合事業に対する市としての考え ⑤要支援1・2の方へのヘルパーとデイサービスにかかわる来年度以降の対応について ⑥介護保険の利用状況 ⑦介護保険事業の課題について。

 懇談のはじめに、自治労連本部の福島副委員長から「自治体職員としての復興・復旧のあり方、住民本位の復興という課題について、労働組合と行政は同じ方向を向いて仕事ができる。陸前高田市の抱える課題や要望を伺い、国に対してものを言うための懇談にしていきたい」とのあいさつがありました。懇談には陸前高田市から保健福祉部長ほか2名が対応。また陸前高田市議2名が同席しました。

 上記の7点について説明を受けた後に介護対策委員から質問が出され、保健師の人材・人員確保については、県や他自治体からの支援などで国基準の人員は確保しているが、震災前の7名のうち5名が犠牲になり、残された2名の経験の浅い若手保健師を筆頭に新規採用を続け補充をしてきている。ベテランがいなくなってしまい今は若手ばかりで苦しいが数年先には市民に良かったと言ってもらえる体制・サービスの質の確保を図っていきたい。復興住宅にかかわる問題点については、プライバシーが確保される一方で、コミュニティー・コミュニケーションがとりにくくなる面があることなどが説明されました。市の抱える問題として、産業基盤をみると弱く、震災からなかなか立ち直れないが、社会基盤の整備によって暮らしやすさを生み出す産業を作り出し持続可能な地域づくり、妊娠期から成人に至るまでの継続的な子育て支援によって安心して暮らせる陸前高田市を目指したいことなどが語られました。

 大船渡市職・大船渡市社協・三陸福祉会職員労組役員との懇談

 10日の夕方からは、大船渡市に移動して大船渡市職・大船渡市社協・三陸福祉会職員労組役員のみなさんと懇談・意見交換を行いました。

 仮設住宅からの復興住宅等への移転状況については概ね半分程度であるが、高齢者など社会的に弱い人たちから優先的に移転しているため、弱い人たちを集めたコミュニティーになってしまっている。仮設で暮らすことにより、生活活動の範囲が狭まり運動不足などの問題が発生し、サロンを開設して運動不足解消などを図ってきたが、復興住宅にはサロンが開設されていないため、周囲とのコミュニケーション不足や運動不足などの問題が発生し、これまで以上に高齢者の足腰が弱くなってきている。自宅が無事だった人と仮設住宅で暮らす人との間に、同じ被災者でありながら支援の有無などを含めて壁が存在していること。三陸福祉職員労働組合の笹浦委員長からは、震災により施設が全壊し職員も半減し、残された職員の中には深い悲しみと将来不安が募る中、組合を結成して入所から愛される施設に! 非正規職員の待遇改善を! 組合があって良かったとみんながおもえるようにとの思いで頑張ってこられたことなどが語られました。

 大槌町職員組合役員・保健師との懇談

 11日は大槌町へ移動し、「3.11岩手 自治体職員の証言と記録」の中でも証言をされている保健師の岩間純子さん、大槌町職員組合の小笠原委員長ほか執行部のみなさんと懇談・意見交換を行いました。

 保健師の岩間さんから大槌町の現状や抱えている問題点、震災から丸4年を迎えるが9割が仮設住宅での生活をしいられており、被災者は仮設住宅の耐久年数に対する不安や、建物の隙間や結露によるカビなどに苦しんでいることなどが報告され、小笠原委員長からは町内の移動手段の確保が困難で、循環バスを運行しようにも仮設団地の半数が田園地帯にあり道路が狭く中型バスの乗り入れが出来ず、ハイエース2台で対応していて運行に限界があること等が語られました。

 介護保険料の問題については、震災によって働き先が減少したことにより労働人口が少ない。地域の収入レベルに見合った保険料設定や制度・メニューの必要性や、地域の特性によってすべてが都市部と同じようにはいかないことを国に理解してほしいなどの要望が語られました。

 2日間の懇談で、医療・介護総合法によって改悪されていく介護保険制度については、現行制度でも介護を必要とする人が、サービスを提供する側の人員不足などにより必要とする介護が受けられていない現状、サービスを提供する側も介護職員の低賃金や労働条件の悪さから人材を募集しても人が集まらず苦労している現状などが浮き彫りになりました。今後、みなさんからお聞きした要望を国に伝え、より良い制度へと改善させるため「自治労連介護政策案」づくりをすすめていきます。

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