総務省による、事実上のマイナンバーカード取得強制に抗議する~公務員を政権の道具にすることは許されない(談話)
2019年7月31日
書記長 中川 悟
6月28日、総務省は「地方公務員等のマイナンバーカードの一斉取得の推進について(依頼)」を自治体と各共済組合あてに通知した。それによると、地方公務員・地方独立行政法人等職員やその被扶養者を対象に、パソコン、スマートフォンを利用したオンライン申請によるカード取得を勧奨するよう要請し、共済組合に加入していない非常勤職員らへの勧奨も要請。さらに8~9月ごろから、順次、共済組合が作成した氏名・住所等が印字された交付申請書を職場で一斉に配布し、各自記入の上、被扶養者分と併せて所属部署に提出させ、所属部署で取りまとめて申請窓口に郵送するよう依頼する等の内容になっている。加えて、今年度中4回にわたり、一人ひとりの職員の申請・取得状況を調査するとしている。
これは総務省による地方公務員等の私的領域への重大な人権侵害であり、強く抗議する。
今回の問題は、①本来、カード取得は個人の自由であり義務付けはないにもかかわらず、職場を通じて勧奨すること、②立場の弱い入庁前の新規採用予定者や非常勤職員にまで勧奨すること、③共済組合の保有する個人情報を、本人の同意を得ることもなくカード申請書作成のために目的外使用すること、④被扶養者も含めたカード申請・取得の有無の調査は、内心の自由の侵害であること、など多岐にわたっている。
自治労連は、7月18日に申請書印刷を決めた市町村職員共済組合連合会に印刷の撤回を要請し、連合会から「あくまで単位共済組合の印刷業者への委任にもとづき一括印刷を行うにすぎず、委任を行うかどうかは単位共済組合の自由であること」を確認した。さらに7月23日には総務省への要請を行い、共済組合からの個人情報提供や、職場を通じた申請書の配布・回収、申請・取得状況調査の撤回を求めた。残念ながら撤回させるには至っていないが、「今回の通知は、あくまで『勧奨』であり、強制する意図はない」「法律でも、マイナンバーカードの申請義務はない」「申請しないことによる不利益扱いはあってはならない」などを確認した。
たたかいは今後、各単位共済組合、各自治体、各職場に移ることとなる。早急に職場に伝え、それぞれの段階で、カード取得強制を許さない取り組みが求められる。
私たちはこれまでも、マイナンバー制度により国民の個人情報を国が集中管理し、国民監視を強めようとしている問題点、個人情報が集積するマイナンバーカードを紛失した場合のプライバシー流出の危険性を指摘してきた。さらに今、行政サービスや社会保障分野の産業化(ビジネス化)をすすめるため、公的個人認証(電子証明書)機能を持つマイナンバーカードの普及が狙われている。従来は市町村が担っていたサービス提供が縮小することは、自治体のあり方を変えてしまうことにもつながる。
今回の事態は、カードの普及が進まないことに焦る政府が、健康保険証との一体化を口実に、共済組合も使って取得「促進」を図ろうとするものであり、公務員を、時の政権の政策・方針に唯々諾々と従わせようとするものであることにほかならない。同時にこの動きを許せば、国民にも同様の動きが一気に広がることは想像に難くない。
自治労連は、マイナンバー制度に反対する立場からも、職場の仲間の権利を守る立場からも、引き続き、カード取得強制を許さない取り組みを職場・地域ですすめていくものである。
以上