(1)菅内閣は本日(6月3日)、国家公務員一般職の月次給・ボーナスを最大で10%引き下げる「特例法案」の閣議決定を強行した。東日本大震災と福島原発事故の被害に苦しむ被災地住民のいのちと暮らしを支えるため、現地で、そして全国から数多くの公務員の仲間が現地に駆け付け、一緒になって生活確保と復旧・復興のために力を尽くしている。
このがんばりを支え、被災地の住民の暮らしを確保する抜本的な手立てをうつことこそ、今、政府に求められている。賃下げの合理的理由も根拠も説明できず、労使合意を無視した閣議決定の強行に満身の怒りを込めて抗議し、即時撤回を求めるものである。
(2)国家公務員の賃金引き下げは、地方公務員の賃金引き下げに連動し、福祉・医療職場など、公務員準拠となっている625万人もの労働者の賃金に直接影響をもたらすとともに民間労働者の賃金にも悪影響を及ぼすものである。
同時に今回の公務員賃下げの行きつく先には、「社会保障と税の一体改革」、さらに「復興税」という名の「消費税増税」が、具体的に検討されている。「まず身を切るのは公務員から」と、国民に負担を押し付ける「露払い」となるものであり、断じて認められない。
(3)人事院勧告にもとづかない賃下げは、「臨時異例の措置」「3年の時限措置」と言い訳しても、労働基本権保障を定めた憲法28条に違反する。
総務大臣は、5月13日の交渉の冒頭に「みなさんの理解と納得をしていただけるよう話し合いを行う」としながら、6月2日の交渉では「労使合意に至らなくても、法案の提案を国会に行い、成立すれば従っていただく」として、「勤務条件法定主義」をタテにとった対応に終始した。今回の交渉が、協約締結権回復などを内容とする「公務員制度改革関連法案」の議論と並行していることから見れば、極めて矛盾に満ちた不当な行為であり、まったく理解できるものではない。
(4)5月13日の総務大臣の賃下げ提案以降、政府に対する賃下げ反対の署名は16万筆を超えて一気に広がり、大震災の復旧・復興には公務公共サービスの拡充が不可欠であることを訴える街頭宣伝行動も、全労連公務部会規模で各地で行われ、1日から3日の総務省前の座りこみ行動には、延べ1500人が参加した。
こうした私たちの「打って出る」取り組みの中で、マスコミ報道も「国家公務員の給与引き下げは、地方や民間にも影響を及ぼす」「労働基本権の回復に向けた明確な道筋を提示すべきだ」などと変化をし、節度ある自治体の首長の見解表明も京都府知事、神奈川県知事、千葉県知事、福岡県知事、高知県知事、川崎市長、千葉市長、など相次いで行われた。こうした中、片山大臣から「(総人件費2割削減の)マニフェストを金科玉条にしているわけではない」「(地方への影響について)政府部内での論争を経た、政府としての統一見解」との回答を引き出した。この間変化を作り出した私たちの取り組みに大いに確信を持とう。
(5)一方で、連合・公務労協、自治労は、「震災後の復旧・復興の中での労使協議だった」とし、一切の大衆行動を行わず、中央段階での労使協議・交渉のみに終始したあげく、政府の当初提案に若干の修正をさせたとして、5月23日には早々と妥結をした。国民が今持ち始めている公務公共サービスの拡充の願いに目をそむけるとともに、「特定政党支持」路線の害悪を、もっとも明らかな形で傘下組合員に押し付けるものと言わざるを得ない。
(6)被災地をはじめ住民のくらしを建て直すためには、公務公共サービスの拡充を図ること、「公務員総人件費2割削減」の政府方針を撤回することが必要である。すべての労働者の賃金底上げ、くらしを支える社会保障を拡充するとともに、震災復興と福島原発被害の保障に向けた十分な財政を捻出することが政府に求められる。
政府が保有する基金の活用や、手元資金だけでも100兆円という莫大な内部留保をもつ大企業に、震災目的の無利子国債を引き受けさせるなど、政府の政策の転換を行えば、数10兆円ともいわれる、震災被害の保障と復旧・復興の規模に視合った財源が確保できる。 自治労連は、公務・公共サービスの切り捨てや、すべての労働者の賃下げと国民の負担増、地域経済停滞につながる公務員の賃下げを許さず、閣議決定された「賃下げ」法案の廃案めざす国会内外の取り組みを進める。具体的には、緊急抗議要請、国会議員要請とともに、地域での宣伝行動や公務公共拡充署名を公務・民間の共同で広げ、最後まで全力をあげる決意を表明する。