「保育所保育指針」の改定にあたって(談話)
「保育所保育指針」の改定にあたって(談話)
2017年4月24日
書記長 中川 悟
2017年3月31日、厚生労働省は、各都道府県及び区市町村に対して「保育所保育指針の公示について」を発出した。「保育所保育指針」の改定は10年ぶりとなる。適用は2018年4月1日からで、それまでは周知期間とし、研修などを通じて現場に周知するとしている。
改定の議論は「社会保障審議会児童部会保育専門委員会」で行われ、「改定の方向性」として、①乳児・1歳以上3歳未満児の保育に関する記載の充実、②保育所保育における幼児教育の積極的な位置づけ、③子どもの育ちをめぐる環境の変化を踏まえた健康及び安全の記載の見直し、④保護者・家庭及び地域と連携した子育て支援の必要性、⑤職員の資質・専門性の向上といった内容が示された。
特徴は、「小学校との円滑な接続」のために「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」が最上位の目標として掲げられ、それを達成するために保育計画を策定し、評価し、改善しなければならないとなったことである。また、専門委員会では議論されなかった「国旗・国歌」に「親しむ」ことが初めて明記されている。
子どもの興味や関心は一人ひとり異なる。できることやできないことも然りである。にもかかわらず、小学校との円滑な接続のためとして、画一的に「育ってほしい姿」を打ち出している。これにより、5歳児の段階で「できる子」と「できない子」に振り分けられてしまい、「できる子」を作りだすことが保育士の仕事になってしまう。そして、国家が保育の内容にまで介入することは、主体的な子どもを育てるという点でも、憲法19条「思想及び良心の自由」に反するという点でも大いに問題である。
国旗・国歌法の制定時には強制はしないとしていたにも関わらず、「国旗・国歌」に「親しむ」ことが明記されたことも問題である。安倍政権が進める「教育再生」の理念のもと、「国旗・国歌」とは何か、歌詞の意味もわからない幼児期のうちに、国家への“愛着”をすり込む意図があるのは明白である。
また、職員の資質を向上させるための研修が「施設長の責務」として明記されている。資質向上は重要な課題だが、今、保育現場では、劣悪な最低基準や慢性的な人手不足などにより長時間過密労働が常態化している。そのような中で、研修を単に施設長の責務に帰すだけでは問題の解決にはならない。
なお、厚生労働省は、「指針案」に対するパブリックコメント(意見公募)に2772件もの意見があり、「国旗・国歌」の表記に関しては、1800を超える反対や懸念を示す意見が寄せられたにもかかわらず、まともに回答しないばかりか修正も行わないなど極めて不誠実な態度に終始していることも問題である。
自治労連は、「保育指針」のもとではあっても、つねに、子どもたちを主人公として、豊かに人格形成できるように保育実践をすすめていく。そして、憲法26条「教育を受ける権利」や子どもの権利条約などに基づく、主体的に学び遊ぶ権利が保障される保育を守り、そうした保育現場を担う保育労働者の労働条件の向上をめざして、様々な運動に取り組んでいくものである。