住民のいのちと健康を脅かし、住民自治を無視する公立・公的病院の「再編・統合」の押し付けに断固抗議する(談話)
2019年9月30日
書記長 前田博史
厚生労働省が「医療体制の見直しを求める」として9月26日に行った公立・公的病院の診療実績の分析の公表に対し、住民のいのちと健康を守り、安心して住み続けられる地域をめざして運動をすすめる自治労連として、断固抗議する。
厚労省は、自治体が運営する公立病院と日本赤十字など公的機関が運営する公的病院の4分の1超にあたる全国424の病院をリストアップし、「再編統合について特に議論が必要」とする分析結果とともに対象となる病院名の公表を行った。
厚労省によるこの分析結果は、「公立・公的病院の再編」を都道府県ごとにまとめた「地域医療構想」について、全国1652の公立・公的病院のうち1455病院に、がんや救急医療など9項目の診療実績を分析し、手術件数などが一定水準未満の病院のほか、乗用車で20分圏内に同程度の実績の病院が複数ある場合も要請対象としている。これは都道府県別では、全体の29.1%に当たり、新潟(53.7%)、北海道(48.6%)、宮城(47.5%)、山口(46.7%)、岡山(43.3%)の順で高くなっているとしている。また、年内にも対象施設に再編・統合の検討を要請し2020年9月末までに対応を決めるよう求めている。
しかし、再編のあり方については、厚労省には公的病院運営の決定権がない。そのため「統廃合」に限定せず、病床数の削減、診療科や病院機能の集約化など地域の実情に見合った形となるように区域ごとの議論に委ねるとしている。
今回公表された公立・公的病院は、住民が安心して地域で住み続けるために必要な医療機関であり、必要な病床である。それにも関わらず、「地域医療構想」の進捗のみを目途に、病床削減や周産期医療の移行、夜間緊急受け入れの中止、(高度)急性期医療からの転換、病院の統合等を強引にすすめれば、地域での医療を必要とする住民(患者)は行き場を失い、「安全で質の高い医療を受ける権利」が侵害されることは明らかである。
公立・公的病院が果たす役割は地域によって異なり、医療現場は、人手不足の中でも必死に地域医療を支えている。
住民や医療現場の声も聞かず深刻な医師・医療労働者不足解消の具体策を何ら講じないまま、「地域医療構想」をてこに、偽りの「医師偏在対策」「医療労働者の働き方改革」を同時に推進しようと圧力をかけ、住民合意を得ることのないまま一方的に押し付けることは、断じて容認できない。
自治労連は、「地域医療と公立・公的病院の充実を求める『いのちと地域を守る大運動』」を展開し、住民生活を守るうえで欠かせない周産期医療や救急医療、へき地医療など政策医療を担い、住民のいのちと健康を守る運動を住民との共同を広げて継承・発展させてきた。そのなかで、多発する災害時の医療提供体制の維持はもとより、地域住民が等しく医療を受ける権利が行使できる地域医療体制の中心、すなわち住民自治機能としての自治体病院の役割を果たしてきた。
自治労連は、住民のいのちと健康を守る立場で共同を広げ、職場と地域から、住民が安心してくらし続けられる地域医療と介護・福祉を守る「いのちの砦」としての自治体病院の役割の発揮に向けた運動を全力ですすめていく決意を表明する。
以上