政府は、地方自治体が住民のくらしに責任を持てる財源保障を~2020年度地方財政計画について(談話)
2020年2月20日
書記長 前田 博史
安倍内閣は2月8日、2020年度地方財政計画を閣議決定した。地方の一般財源総額は、税収増を見込んで前年度を7246億円上回る63兆4318億円を確保し、地方交付税は前年度から4073億円増の16兆5882億円となっている。臨時財政対策債は前年度より1171億円減少して3兆1398億円となっている。地方の財源不足は前年度より1184億円増加して4兆5285億円となっているが、依然として厳しい状況が続いている。地方交付税は前年を上回ったが、地方自治体の財源を保障し、財源格差を調整する役割を担うものであるという役割を果たしていない。地方交付税法定率の引き上げをはじめとした抜本的な制度改正こそが求められる。
地方交付税のトップランナー方式については、「業務改革の取組等の成果の基準財政需要額の算定への反映」という名称に変更したが方向性は何も変わってはいない。2020年度も窓口業務への導入は見送られたが、民間委託に加え、公権力の行使にわたる事務を含めた一連の事務を地方独立行政法人に委託することを推進するとしている。自治労連はこの間、国に対して地方交付税の財源保障機能を損なわせるトップランナー方式の廃止を求め、地方団体にも共同を呼びかけてきた。引き続き「業務改革の取組等の成果の基準財政需要額の算定への反映」(トップランナー方式)の廃止と、窓口業務のアウトソーシングを許さないたたかいを進めることが求められている。
会計年度任用職員制度の施行に伴う期末手当の支給に要する経費について、地方財政計画に1738億円計上し、地方交付税措置を講ずるとしている。また、職務内容、勤務形態等に応じて任用根拠の明確化・適正化に取り組むとともに、会計年度任用職員の勤務時間については、職務内容や標準的な職務量に応じて適切に設定することとしている。
これまで自治労連は国に対して、会計年度任用職員制度への移行にあたり、不利益が生じることがないよう適正な勤務条件の確保と、制度移行に必要な財源は実態調査を行って確保すべきと求めてきたが、新制度創設における財政措置は、期末手当の支給に要する経費のみであり、事務処理マニュアルにある「常勤職員の初任給決定基準や昇給の制度との権衡(つりあい)を考慮」などは一切考慮されておらず、極めて無責任な対応と言わざるを得ない。
地方公務員の人員については、給与関係費における地方財政計画上の職員数について、一般職員(教職員、警察官、警察事務職員及び消防職員を除く職員)については、「児童虐待防止対策体制総合強化プラン」に基づく児童福祉司等の576人の増員を含め5014人の増員としている。児童相談所等の地方交付税措置については、児童福祉司等の処遇改善に要する経費として特殊勤務手当の増額を図ることとしている。また、消防職員も消防防災行政の状況等を勘案して1000人の増員(昨年と同じ)としている。
地方公務員における若干の人員増は、これまでの人員削減による公務公共サービスの低下が社会的な問題となり、防災体制の強化や、児童虐待問題に対応する体制の強化をはじめ、自治体職員の人員増を求める自治労連と住民の共同したたたかいが一定反映されたものである。しかし、職場の実態からすれば極めて不十分である。時間外勤務の上限規制が導入されて以降、職場の業務量に見合った人員配置がされていない状況では、職員への負担増や、公務公共サービスの低下は依然として深刻であり、地方自治体が業務に必要な人員を確保できるように、抜本的な財政措置を行うことをあらためて求める。
マイナンバーカードについても、マイナポイントによる消費活性化策や2021年3月からの健康保険証利用などによる交付枚数の増改に対応するよう、市区町村に交付円滑化計画の策定を要請しており、個人番号カード交付事務費補助金610億円を計上。広報に関する地方財政措置を拡充するとともに、マイナンバーカードの多目的利用に要する経費にかかる特別交付税措置を2022年まで延長し、各市区町村におけるマイナンバーカードの交付体制の整備及び普及・利活用の推進に積極的に取り組むようにと強要している。マイナンバーカードの情報連携は、国による住民情報の一元管理による人権侵害の危険性がさけられない。
国がやるべきことは、国民が全国のどの地域に住んでいても憲法に基づく健康で文化的な生活が営めるようにナショナルミニマムを保障し、地方自治体の財源格差を是正して、地方財政を拡充させることにある。自治労連は、地方自治体が憲法に基づき「住民の福祉の増進」(地方自治法)を図る役割を発揮するために、国が責任を持って地方財源を保障することを強く求める。
地方交付税については「三位一体改革」で大幅に減らされた額を元に戻し、地方の財源格差を調整し、財源保障の機能を果たすよう制度の抜本的な拡充を図ることを求める。
自治労連は、2020年度政府予算案が審議される通常国会に対する取り組みをはじめ、公務公共サービスを支える地方財政を拡充させるために、引き続き住民、自治体関係者との共同を広げてたたかうものである。
以上