大阪「都構想」協定書可決にあたって 全国の地方自治体に悪影響を及ぼす、自治体の権限と財源を奪う大阪「都構想」を阻止しよう(談話)
2020年9月4日
書記長 前田博史
大阪府議会(8月28日)、大阪市議会(9月3日)において、大阪市を廃止し、特別区に再編する大阪「都構想」の協定書(設計図)が維新の会や公明党などの賛成多数で可決・承認された。
大都市地域特別区設置法では、府市両議会で協定書を承認し、府市の法定協議会に通知後、60日以内に住民投票を行う定めがある。新型コロナウイルスの感染状況が深刻化しなければ、11月1日にも二度目の住民投票が実施される。なお、決議では、新型コロナ感染急拡大に備えて、天災等を理由に投票日を延期する公職選挙法57条(繰り延べ投票)の要件緩和を国に要請し、医療崩壊など府民の命が脅かされる場合に住民投票の延期や中止の判断を求めている。
住民投票で賛成多数となれば、大阪市は2025年1月1日付で廃止され、4つの特別区(淀川・北・中央・天王寺)に移行する。大阪市の業務のうち、都市計画など広域行政は府に一元化し、特別区は保健所や教育委員会、児童相談所など業務を担うことになる。しかし、地方自治の本旨である「住民福祉の向上」の概念は非常に曖昧で、「特別区設置時の市民サービスは維持する」としているが、その後は「努力目標」になっている。
大阪市が廃止され特別区に移行すれば、広域的なまちづくりや交通基盤整備、港湾などの重要な機能は大阪府に移譲される。大阪市の都市計画決定権限と財源を大阪府に集中させて巨大開発を「一人の指揮官」となる知事の権限で推進できる地方自治制度へと変質させるものである。
また、大阪市の税収全体の6割以上を占める普通税三税が大阪府税となり、地方交付税も大阪府に入ることになる。地方自治の本旨である「住民福祉の向上」をはかる十分な財源さえ確保できなくなる。さらに特別区に隣接する大阪府内の市町村は、住民投票をしなくても、議会で過半数が賛成すれば自動的に特別区に編入されることも可能となる。
大阪「都構想」は、大阪だけの問題ではない。政令指定都市が廃止され、その権限と財政を奪う大阪「都構想」が実現されれば、全国の地方自治体でも同様の事態が起こりかねない。大阪「都構想」は、市町村の自治を奪い「圏域行政」への集権化を進める国の「自治体戦略2040構想」や、財界と自民党・維新の会などが導入をねらう道州制と軌を一にしたものである。
いま、新型コロナウイルスが広がり、住民のいのちや健康、くらしに重大な影響を及ぼしている。地方自治体が医療や保健所など体制の強化するための予算を増やすことこそが求められているときに、逆行するものであり断じて許されない。
自治労連は、憲法と地方自治にもとづき、住民のいのちとくらしを守る立場から、大阪「都構想」に反対するとともに、住民投票に向けた大阪のたたかいを全力で支援するものである。
以上