特別措置法等の改正にあたって(談話)
「私たちの仕事は罰することではなく、命を救うこと(保健師)」
私権制限ではなく、医療・保健所等の充実、要請への補償を!
2021年2月4日
書記長 石川 敏明
菅内閣は2月3日、新型コロナ感染症に対応する新型インフルエンザ等対策特別措置法(特別措置法)、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(感染症法)、検疫法の改正案を日本共産党と国民民主党などの反対を押し切って成立させた。
当初、休業や営業時短命令に応じない患者などに罰則を科すとしていたが、世論と野党の反対を受けて行政罰の過料とした。しかし、過料は50万円と地方自治体が課すものとしては異例の高額で、懲罰的な制裁だと言わざるをえない。70人を超える憲法研究者有志が30日に声明を発表し、「重大な憲法問題を惹起する」として、社会的害悪が明確で悪質な行為だけを「犯罪」として法律で定めることができる「適正手続主義」(憲法第31条)上も問題だと指摘している。罰則による主権制限は、平時からの備えを怠り、公務公共の人員を削減してきた国の責任を免罪し、国民に転嫁するものである。
さらに、昨年の感染拡大時期に、憲法に緊急事態条項を創設しようとする意見が当時の首相からあがっていた。全国知事会からの要請を口実にしているが、私権制限の前例をつくろうとする政権の思惑が透けて見える。憲法をいかしたコロナ対応をあらためて求めるものである。
現在、保健所や医療の最前線では、昼夜を問わず職員が一丸となって感染者の対応や治療に全力を尽くしている。保健所では限られた人数で感染者の入院調整や調査業務を行ない、医療現場では医療体制がひっ迫するなかでも懸命に働いている。保健所現場からは、「罰則よりもきちんと対応できるマンパワーをまずは整えるべき。罰則を強化すれば住民は構えてしまう。デメリットしかない」「私たちの仕事は罰することではなく、命を救うこと」との声があがっている。罰則規定の導入は、PCR検査の抑制、感染事実のいんぺいにつながることが危惧され、感染拡大防止の妨げになりかねない。政府に、全額国費による検査の抜本拡充、医療機関・保健所への支援の充実、自粛と一体の十分な補償を求める。
自治労連は、これまで総務省交渉などを通じて、保健所等の体制拡充と必要な財源の確保を繰り返し要請してきた。この間の運動が国民世論を広げ、保健師の増員予算が措置された。引き続き、住民の不安に応え、十分な補償、社会的連帯でコロナ対策をすすめ、いのちと健康、くらしを守るため全力をつくすものである。
以上