2021年人事院勧告に対する声明
8月10日、人事院が国会と内閣に対して2年連続で国家公務員の一時金(期末手当)削減勧告を行ったことに対し、自治労連は満身の怒りを込めて抗議する。
自治体労働者は、コロナ対応での奮闘にふさわしい賃上げを求めている。マイナス勧告は職員の誇りを踏みにじるものである。
賃上げどころか最低賃金以下の初任給を放置
月例給については民間給与を19円(0・00%)上回っており、較差が極めて小さいとして改定を見送った。
調査結果では民間企業の高卒初任給は168,943円となっているが、国家公務員高卒初任給は150,600円のまま放置している。
今年の中央最低賃金審議会の目安は全国一律28円引き上げ、全国平均930円となった。この結果、最低賃金をさらに下回ることとなった。公務員の給与水準決定の仕組みそのものが破綻していると言わざるを得ない。
地域手当による地域間格差については、労働組合だけでなく、地方団体や自治体首長からも人材確保や地域経済に深刻な影響を与えていると指摘されており、人事院が一切言及していないことは問題である。
極めて不当な2年連続の期末手当削減
一時金の年間支給月数が民間企業を0.13月上回るとして、4.45月のうち0.15月を期末手当から削減するとしている。実施されれば平均で年額6万2000円の賃下げとなる。再任用職員は2.35月のうち0.1月削減となる。
人事院総裁は談話で「厳しい環境の下、困難な業務に対して誇りをもって真摯に取り組んでいる公務員各位に対し、心から敬意を表します」と述べている。しかし、大幅な期末手当削減を勧告した。敬意は全く感じられない。
一時金の引き下げ時は期末手当に回し、引き上げ時は勤勉手当に回すなど、一時金の生活給としての性格をゆがめるもので許しがたい。
昨年は、多くの自治体で会計年度任用職員の期末手当が削減された。今年の秋季年末闘争でも同様の事態が起きかねない。国では非常勤職員にも同率の期末・勤勉手当が支給されることになった。会計年度任用職員も国と同様とすべきである。再任用職員の一時金も同様である。
定年年齢の引き上げに関して「60歳前後の給与水準を連続的なものになるよう」としているが、これが60歳前後の賃金削減をねらっているのであれば断じて許されない。
「職員の給与に関する報告」の中で、国家公務員法第3条に関する記述がなくなった。人事院の基本的役割から「職員の利益の保護」を外す意図があると思わざるを得ない。
育児・介護休業、両立支援で一部改善
育児休業の拡充に関する意見の申し出のほか、不妊治療休暇の制度創設、非常勤職員の休暇制度改善について言及している。
とくに不妊治療休暇は、地方組織・単組が職場要求にもとづき当局と交渉し、自治体で実現してきた制度である。私たちの運動が国の制度創設につながったことに確信を持とう。
しかし、非常勤職員の強い要求である有給の病気休暇を制度化しなかった。また、雇用の安定についても言及しなかったことは、現場の切実な声に背を向けるものである。
必要な人員確保と処遇改善を求める
自治労連は、疲弊する地域経済に悪影響を及ぼすマイナス勧告は実施しないよう政府に強く求める。自治体には、国勧告に左右されず、コロナ危機の下で奮闘する公務労働者に報いる賃上げを行うよう強く求める。
自治体職場では、コロナ危機のもとで「救えるいのちが救えない」「死ぬか仕事を辞めるか」など現場から悲痛な声があがっている。自治労連は、公衆衛生・医療など懸命に奮闘を続けている公務労働者に応え、長時間・過密労働解消に必要な人員確保、会計年度任用職員等の有給の病気休暇、雇用の安定や処遇改善を求める。
国民のいのちとくらしを守る人員増と体制強化を直ちに行うよう強く要求する。
政治を変え、国民一人ひとりが大切にされる社会を実現しよう
新自由主義による民間委託化、公務員削減、公務公共サービスの縮小が、国民のいのちとくらしを危機にさらしている。政治を転換し、格差と貧困を解消し、公務公共の拡充で住民のいのちとくらしを守りきり、国民一人ひとりが大切にされる社会を実現するため、全力でたたかおう。
2021年8月10日
日本自治体労働組合総連合 中央執行委員会
「自治体の仲間」号外・2021年人事院勧告に対する声明(PDFダウンロード)
「自治体の仲間」号外・2021年人事院勧告概要(PDFダウンロード)