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2022年人事院勧告に対する声明

 8月8日、人事院は国会と内閣に対して、3年ぶりの俸給表改定と一時金引き上げの勧告を行った。プラス勧告となったことは私たちの運動の成果であるが、30歳台後半以降の職員は据え置き、公務全体の生活改善にならない極めて低い勧告に、自治労連は強い不満の意を表するものである。

 2年半以上におよぶコロナ対応や相次ぐ自然災害対応など、公務労働者の奮闘にふさわしい賃上げこそが必要である。

初任給を引き上げるも最賃に及ばず

 月例給については民間給与を921円(0・23%)下回るとして、若年層の俸給月額を引き上げ、初任給は大卒で3,000円、高卒で4,000円の引き上げとしたが、官民の初任給の較差解消には至っていない。

 今年の中央最低賃金審議会の目安は全国平均961円となった一方で、改定後の国家公務員高卒初任給は時間当たり921円であり、その差は40円に広がった。「健康で文化的な生活」を保障する最賃水準を下回る初任給であってはならない。

物価上昇に追いつかない改定率、生活も地域経済も疲弊

 勧告にはこの間の物価上昇は考慮されていない。人事院勧告制度の限界がここでも明らかになった。勧告は自治体労働者の生活改善に何ら寄与しないばかりでなく、すべての労働者にも影響を及ぼすものである。

 経団連のシンクタンクである21世紀政策研究所ですら、6月に公表した提言「中間層復活にむけた経済財政運営の大転換」で、公共部門の賃上げ、人勧制度の見直しにも言及し、公共部門が民間も含めた賃金全体を引っ張っていくことにより地域活性化につなげるとしているなかで、今回の勧告はこうした役割を果たすものにもなっていない。

成績主義強化の勤勉手当引き上げ

 一時金については、年間支給月数が民間企業を0・11月下回るとして、0・10月(再任用職員は0・05月)を勤勉手当で引き上げるとした。勤勉手当の比率を上げることは、一時金の生活給としての性格をゆがめ、人事評価制度と相まって成績主義を強化し差別と分断を拡大させるものであり、許されない。

 2年連続で、多くの自治体では会計年度任用職員の期末手当が引き下げられた。勤勉手当の引き上げが勧告された今年は、当然、一時金が引き上げられるべきである。勤勉手当(相当額)の支給へ法改正を求める運動とともに、自治体でも正規職員の期末・勤勉手当に見あった一時金の支給は待ったなしである。

生涯賃金改悪につながる「給与制度のアップデート」は許されない

 社会と公務の変化に対応できるよう「給与制度をアップデート」し、能率的で活力ある公務組織の実現に向けてとりくむとしている。これは定年引き上げにあわせて昇任・昇格・昇給の基準、俸給表などを見直すとしていることに符合する。

 また2024年の地域手当見直しに際し、必要な給与制度上の措置の成案を示し施策を講ずることをめざすとしているが、地域間格差解消については、いっさい言及していない。

 生涯賃金に大きな影響を及ぼす改悪は絶対に許してはならない。

非常勤職員の処遇改善に言及せず格差を放置

 女性が4分の3を占める非常勤職員の不安定な雇用や劣悪な処遇の改善について、社会の関心が集まっているにも関わらず、非常勤職員に対する処遇改善について全く言及されなかったことは問題である。公務の中で重要な役割を担っている非常勤職員の処遇改善となるよう、人事院は責任を果たすべきである。

長時間労働の解消は最優先課題

 人事管理に関する報告では、長時間労働の是正について、業務削減・デジタル化等による一層の合理化を図った上で、必要な人員の確保としている。現場では、応援体制をはじめ、すでにあらゆる対策が講じられ、それでもなお「過労死ライン」を超える状況であり、実態を全く見ていない。問題は、極限まで減らされた人員体制で増大する業務を遂行せざるを得ないことである。

 フレックスタイム制度の柔軟化にも言及があった。また、テレワークへの新たな手当の検討に言及し、「デジタル化」に前向きな姿勢を示している。仕事と両立して働き続けるための制度は必要だが、最優先すべきは恒常的な時間外労働の現状を改善することだ。

 人材の確保が課題であるとして、採用試験の見直しや「働き方改革」に重点を置いているが、長時間労働の現状を解消し、職員が大切にされる賃金・労働条件とすることこそが公務の魅力を高めることにつながる。今すぐに定員の拡大と時間外上限規制の厳格運用こそ行うべきである。

大幅賃上げ、人員増、会計年度任用職員制度の改善を求める

 公務・公共の役割を発揮し、物価高騰により疲弊する地域経済の好循環のためにも、自治体は、国勧告に左右されず奮闘する公務労働者に報い、今こそ生計費原則にもとづく大幅な賃上げを行うべきである。

 自治労連は、「過労死ライン」を超える長時間労働を直ちになくし、住民のいのちとくらしを守るために、必要な人員増と体制強化、会計年度任用職員の雇用の安定と処遇改善を強く要求する。

政治を変え、国民一人ひとりが大切にされる社会を実現しよう

 新自由主義による公務公共サービスの縮小が、国民を危機にさらしている。政治の転換、格差と貧困の解消、公務公共の拡充で住民のいのちとくらしを守りきり、国民一人ひとりが大切にされる社会を実現するため、全力でたたかおう。

2022年8月8日
日本自治体労働組合総連合 中央執行委員会

 

「自治体の仲間」人事院勧告特集号(22年8月8日)(PDFダウンロード)