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入口規制を行わず、有期雇用の上限を5年とする「労働契約法改正法案」の抜本的修正を求める

2012年3月16日

入口規制を行わず、有期雇用の上限を5年とする「労働契約法改正法案」の抜本的修正を求める


日本自治体労働組合総連合
書記長 猿橋 均

労働政策審議会は3月16日、厚生労働省が諮問した有期雇用規制にかかわる「労働契約法の一部を改正する法律案要綱」について、「おおむね妥当と考える」旨の答申を取りまとめた。
 財界が求めてきた雇用の流動化・柔軟化・多様化により、労働法制の規制緩和がすすめられ、非正規雇用の大幅な増加など、日本社会に深刻な格差を生み出した。有期労働契約者が従事する業務実態を踏まえれば、労働契約は無期契約が原則であり、有期労働契約は、「臨時・一時的な業務」に限定する締結事由規制(入口規制)を行うことを中心とする実効ある労働者保護のための規制が求められてきた。しかし、法律案要綱は、有期契約労働者の不安定・低賃金という労働条件の抜本的改善につながらないどころか、逆に5年雇い止めが広がり、雇用の不安定さが加速することが懸念される内容となっている。労働契約法は公務員適用除外となっているが、この「改正」によって、自治体非正規雇用労働者にも大きな影響を及ぼすことが予想される。

 具体的には、1)「入口規制」を見送るとともに、2)有期労働契約の長期にわたる反復・継続に係る「出口規制」については、① 5年を超えて反復更新された場合は、労働者の申込みにより、無期労働契約に転換させる仕組みを導入、ただし、②別段の定めがない限り、労働条件はそれまでと同一で、③ 6ヵ月の空白期間(クーリング期間)をおけばそれまでの有期雇用契約は通算されない、また、④上限年数5年の手前での雇止め抑制策について先送りした。そして、3)「雇止め法理」が法定化されたが、4)「均等待遇」原則については、いくつもの条件をつけることで「不合理と認められる」範囲を限定した。

 自治労連は、地方任期付採用法導入時、この制度が3~5年の有期雇用の職員に広く本格的業務、それも住民に対するサービスの中核部分を担わせようとするもので、任期付職員の適用要件たるや、極めて広範であいまいであり、事実上無限定に拡大されてしまうことを指摘した。事実、総務省による定員管理・削減が求められる中で、正規代替されてきており、大阪府吹田市では、「任期付職員制度の導入により、正職の採用について、3年間全面停止」が計画されている。こうした例をはじめ地方自治体においても、臨時・非常勤職員や任期付職員に恒常的業務を担わせる「有期雇用の濫用」が行われている。

 自治労連は、継続した業務があるにもかかわらず繰り返される「雇い止め」に対して、職場・庁内・地域の世論として広げ、「雇い止め」を強行する当局の不当性を明らかにするとともに、反撃する保障となる組織化をすすめてきた。そして、雇用期限についての運用改善や、勤務実績を加味させることで雇用継続を勝ち取ってきた。
 職務に従事する職員がその職責を全うしようとすれば、当然のことながら、そこには専門性が要求される。これは研修や長期にわたる勤務の中で研鑽を重ねる中で習得されていくものであって、そのためには当該職員に対する長期の安定した雇用が不可欠の前提となる。同時に、住民の福祉サービス等に最も身近な公務員がことごとく不安定雇用に置き換えられれば、長期的には住民サービスつまり人権保障機能の低下をもたらすことになる。

 自治体構造改革により人員削減やアウトソーシングがすすめられ、地方自治体が「官製ワーキングプア」を大量につくり出してきたもとで、その解消のために公契約のもとで働く者たちの適正な労働条件を確保にむけた公契約条例が各地で制定されつつある。また、人材確保や不安定雇用解消のために、任期付短時間勤務制度の任期をなくすべきだと表明する自治体当局もあらわれてきている。

 自治労連は、格差社会に対する国民的な批判に逆行する財界の思惑を許さず、労働者派遣法改正案やパート労働法改正などとあわせ、ヒトを使い捨てする有期労働契約の規制強化によって、期間の定めのない直接雇用、均等待遇原則の確立がはかられる改正を求める。そして、いっそうの雇用期間・回数の厳格化による雇い止めの多発が想定されるもとで、「雇い止め阻止!誇りと怒りの大運動」の強化で、不当な雇い止めを許さない取り組みをすすめる。さらに、均等待遇に基づく任期の定めのない短時間一般職公務員制度の確立を求め、正規・非正規が一体となって、改善に向けた大きな運動をつくるために全力を尽くすものである。

(以上)

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