本日、民主・自民・公明3党の密室合意を経て、国家公務員の賃金を、昨年4月にさかのぼりマイナス0.23%の11人事院勧告を実施した上で、今後2年間にわたり、平均7.8%引き下げるとする給与特例法が成立した。さらに法律の附則には、地方に対しても「法の趣旨にそった措置」として、事実上、地方にも賃下げを強要する条文が盛り込まれた。
自治労連は、労働基本権制約の「代償措置」たる人事院勧告制度を無視する憲法違反であるというだけでなく、消費不況が国民生活を困難に陥れ、官民を問わず、すべての労働者の賃上げで内需拡大を図らなければならないときにあって、あえて賃下げを強行しようとしていることに断固として抗議する。
今回の賃下げは、震災復興をはじめとする財政問題を口実にしているが、実際には、「税・社会保障一体改革」の名のもとに、国民に耐えがたい負担を強要する「露払い」にほかならない。
国民の多くは、「国民の生活が第一」という訴えに共感し、民主党政権を誕生させた。それだけに、公約の実現に何らの責任を持たなかっただけでなく、公約そのものを反故にして自公政権に逆戻りした現政権に強い失望感や怒りを持っている。アメリカや財界・大企業の期待に応え、構造改革回帰に舵をきった政府が、なにがなんでも消費税増税、社会保障削減を進めるため、国民の怒りの矛先を、あえて公務員賃金引き下げにすり替え、強行したところに本質がある。
そのことは、憲法違反法案をまともに国会で審議することもなく自民党・公明党にすり寄り、妥協を重ねた経過からも明らかである。
国家公務員への協約締結権回復を含む「公務員制度改革4法案」は審議入りすらできず、附則に賃下げの地方波及が盛り込まれ、最後には、労使合意がなにより優先されるべき賃金決定を、使用者としての最低限の責任すら放棄し、議員立法に任せるという無責任きわまる対応さえ行った。
同時に、連合・公務労協が、昨年5月の政府との労使合意をもって、たたかいを放棄したことは、労働者・国民の願いを踏みにじるものであった。
今回の賃下げは、本来なら懲戒処分に値するほどのものであり、何より労働者の生活を直撃する。5%・10%もの賃下げが強行されれば、住宅ローンの支払いや教育費をねん出することも困難になり、家族の人生設計さえ狂わせかねない。自公政権から現政権へ受け継がれた悪政のつけを公務労働者、さらに民間労働者・地域住民におしつける。これが政府のいう「身を切る」ことの現実である。
こうした中で、大阪市の橋下市長が、一部労働組合の弱点をあげつらい、あたかも全国の公務員労働組合が違法行為を行っているかのように描き出していることにも、同様の狙いがあると言わざるを得ない。国会で決めさえすれば憲法違反の賃下げさえできるという政府と、「民意」だとして憲法違反の思想調査を行う橋下市長には共通するものがある。
自治労連は、昨年6月の国会提出から半年以上にわたり法案成立を許さなかった公務・民間共同のたたかいに確信を持ち、今後も職場組合員と住民の暮らしを守る立場を貫いて、賃下げの地方波及を許さず、すべての労働者の賃金引き上げ、国民生活の悪化しか招かない「社会保障と税の一体改悪」反対、それにつながる公務員総人件費削減阻止へ、さらに大きな共同を広げ、断固としてたたかいを継続することを表明するものである。