昨年の大阪市長選挙で市長となった橋下徹氏の言動は、日々、その異常さの度合いを増している。
11月27日の市長選挙直後の12月8日、「職員は市長の職務命令に忠実に従え」とした通達を行うとともに、橋下氏や大阪維新の会に対し批判的なコメントをした職員を特定し、反省文を提出させた。
また、12月28日の市議会での初の施政方針演説では、「組合が公の施設で政治的な発言を一言でもするようなことがあれば、断じて許さない」「公務員の組合をのさばらしておくと国が破たんする」「市役所の組合を改善することで、全国の公務員組合を改めることしか、日本再生の道はない」などと、日本の政治の行き詰まりや、全国最悪ともいわれる大阪市民の暮らしの実態の原因が、あたかも公務員労働組合にあるかのように描き出し、敵意をむき出しにしている。
そして、大阪市の一部の労働組合に不適切な行為があることを口実にして、市庁舎内にあるすべての労働組合の事務所・スペースの退去を求めるとともに、「組合適正化条例案」を提出するとして、突如2月10日から「労使関係に関する職員のアンケート調査」を実施している。
「市長の業務命令」として発せられた、このアンケートの内容は、職員に氏名・職員番号・所属を書かせた上で、「組合加入の有無」「組合活動への参加」「組合活動の内容」「組合に誘った人の名前」まで記入させるなど、まさに憲法に違反し、常軌を逸したものとなっており、さらに「正確な回答がなされない場合には処分の対象」と恫喝をするものとなっている。
公務・民間に関わらず、労働者の団結権を保障する内実として、事業所内の労働組合の事務所を設置することは広く認められている。労働組合の退去を求める合理的な理由や、労働組合との正常な協議もなく退去を一方的に通告することは、労働者の団結権を侵害するものに他ならず、民間労働組合にも重大な影響をもたらすものである。
また、地方公務員といえども政治活動の自由は憲法で保障されており、極めて一部分の行為(職務権限の行使など)が規制されているにすぎない。労働組合がその目的の実現に向けて、制度・政策の問題点や政治のあり方について自由に議論し、改善を求めることは、当然の権利である。
さらに自治体・公務公共業務に働く労働者・労働組合が、自らの職務に関わって、自治体の制度・政策、方針、さらには住民の声・要望などについて、自由に議論できてこそ、その職務を全うすることができる。「政治的な活動を禁じる」「民意を口にすることは許さない」として、制度・政策の問題点、住民の声に目・耳・口をふさぎ、首長の指揮・命令に隷従を求める橋下市長の言動は、許されるものではない。ましてや、労働組合活動の自由、個人の思想信条の自由をも真っ向から踏みにじる「職員アンケート」については、ただちに中止することを求める。
橋下市長は、憲法や現行法にも違反する「職員基本条例」「教育基本条例」の策定、道州制を指向する「大阪都」構想や、大阪市民の財産である文化の切り捨て、大阪市営地下鉄の民間譲渡などを進めようとしている。また、「大阪維新の会」の首班として、「大阪都構想=道州制導入」「教育への政治介入」「職員基本条例の法制化」、さらには「憲法改正」までも視野に入れた「船中八策」を持って、国政への進出を狙っている。
こうした構想が市民の願いではないことは、先の大阪市長選挙での平松陣営の得票(41%)や、この間湧きおこる、労働界はもちろん、教育・文化の分野を含め、幅広い府・市民の声などでも明らかである。
自治労連は、市職員の目・耳・口をふさぐ「職員アンケート」をただちに中止するとともに、労働組合敵視をやめ労使関係を正常化することを求める。同時に、幅広い労働組合・住民との共同を広げ、大阪市民の暮らしの立て直しに奮闘する大阪市労組・大阪自治労連を始め、働きがいを求めるすべての大阪市職員を激励し、住民のために働くことのできる職場・自治体づくりのために、全国の力を結集するものである。