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2024年人事院勧告に対する声明

 8月8日、人事院は国会と内閣に対して、国家公務員の給与改定と、「給与制度のアップデート」に関する勧告と報告を行った。月例給は民間給与を1万1183円(2・76%)下回るとして、若年層に重点を置き、再任用職員も含むすべての職員に及ぶ俸給表を引き上げるとした。一時金は、0・10月(再任用職員は0・05月)を期末・勤勉手当で等分に引き上げるとした。今回の引き上げは、春闘を起点に公務と民間とが共同してたたかってきた大きな到達である。
 しかし、中高年齢層や再任用職員の月例給引き上げはわずか1%台で、再任用職員の手当の拡大は住居手当などごく一部にとどまるなど、この間の物価高騰には到底及ばず、生活改善につながらない極めて不十分なものである。住民のいのち、くらしを守るためにさまざまな職場で奮闘する公務労働者の苦労に報いるものとはいえない。自治労連は強い不満の意を表する。

地方の実情を踏まえた給与制度を

 労働組合だけでなく首長等からも切実な要望となっていた地域手当の見直しは、都道府県単位とはされたものの、現行水準を下回る地域も多く、20%もの格差は残り、「中核的な市」等への措置もあり地域間格差の改善とはなっていない。
 通勤手当の支給限度額が引き上げられたこと、新幹線等に係る通勤手当で一部改善があったことは、我々の運動の成果である。一方、燃料費等物価高騰の中で切実な要求であった「交通用具利用者」の通勤手当については見直しが行われなかった。自動車でしか通勤できない地域事情を勘案した制度とすべきである。
 配偶者に係る扶養手当の廃止は、さまざまな事情で扶養対象となっている配偶者へも配慮が必要である。
 寒冷地手当の見直しは、生活実感とも大きく異なる気象庁「メッシュデータ」に基づく地域の区分の設定自体を抜本的に見直すべきである。

「全体の奉仕者」性を歪めるのが「給与制度のアップデート」の本質

 成績優秀者への勤勉手当の支給上限を標準者の約3倍まで引き上げ可能とし、昇格運用に差を設ける検討を表明したことは断じて容認できない。国は、これまで職場に「能力・実績主義」を持ち込んだ結果が「公務の魅力」を減退させたことを反省すべきである。
 「人事管理に関する報告」では、公務が若者の目に魅力的に映らない等の問題意識からさまざまな言及をしているが、魅力を高める答えが見えない。公務の魅力を奪った問題の根本原因は、国民・住民のために良い仕事がしたくても叶わない脆弱な人員体制、長時間残業等の過酷な労働環境である。 
 「給与制度のアップデート」は、「給与制度」を前面に打ち出しつつ、その本質は、公務から「全体の奉仕者」性を奪い、時の権力者等に従順で物言わぬ公務員づくり、「全体に奉仕」する公務から「一部に奉仕」する公務へと性格を歪めようとするものである。「能力・実績主義」の強化は絶対に許してはならない。

労働基本権、はく奪されているのは私たち

 「給与制度のアップデート」は労働条件の大きな変更であるにもかかわらず、人事院は真摯な話し合いを放棄した。人事院が労働基本権制約の代償措置機関となり得ていないことがさらに明確となった。速やかな労働基本権回復を求めるものである。

会計年度任用職員制度の改善を求める

 非常勤職員の給与改定について、一切触れなかった。両立支援等にかかる制度についてのわずかな言及にとどまったことは極めて遺憾である。自治体でも4割にのぼる会計年度任用職員の正規職員と同様の一時金支給、賃金の遡及改定とともに、切実な要求である私傷病休暇の有給化などを直ちに実現させるべきである。

長時間労働の解消にもカスハラ対策も具体策なし

 長時間労働の「是正」について、「上限時間を超えるような働き方は極めて限定的なものでなければならない」とこれまで以上に強く言及したが、実効性ある策は示していない。人事院が実施したアンケート結果でも人員不足が明らかであり、定員合理化計画の緩和程度ではなく抜本的な人員増に言及すべきである。
 カスタマー・ハラスメントについても「各府省には職員を守る義務がある」としたものの、具体策はない。

たたかいの場は自治体へ

 広域異動を前提とする働き方の国家公務員と、地域に根差して働き続ける地方公務員とは、事情も異なる。画一的に国の制度を自治体に持ち込ませてはならない。
 自治労連は、地方自治体が公務・公共の役割を発揮するためにも、だれもが希望と意欲をもてる、賃金水準と公務員制度を求める。
 さらに、「過労死ライン」を超える長時間労働を解消し、住民と職員のいのちとくらしを守るために、大幅な体制強化、会計年度任用職員の雇用の安定と処遇改善を強く要求する。

政治を変え、一人ひとりが大切にされる社会を実現しよう

 新自由主義政策、大企業優先、大軍拡・大増税の政治を転換し、憲法と地方自治がいきる社会と、働きがいと魅力ある職場をつくろう。自治労連は住民とともに公共を取りもどし、一人ひとりが尊重される社会を実現するため、全力でたたかうものである。

2024年8月8日

日本自治体労働組合総連合 中央執行委員会

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