Q 「地方独立行政法人」とは、どんなものですか?
A これは、行革会議の最終報告で言われていた「実施部門のうち事務・事業の垂直的な減量を推進」するための法律であり、「採算性に乏しく民間に委ねては実施されない恐れがあるものを自治体から切り離し」(同法第2条)別組織(独立行政法人)化されるものです。 これによって、経営面での「独立」性を強調し、公的責任よりも効率優先で人件費を切り下げやすくし、また、住民負担を強めやすくするものです。
Q どんな事務・事業が対象になるのですか?
A 法第21条では、対象業務を次のように規定しています。
- 試験研究を行う事業。たとえば、都道府県や政令市などに設置されている「公害衛生研究所」などの研究組織が対象となります。
- 大学。府立や市立の大学・短大などが対象となります。
- 公営企業で次の8つの事業が対象となります。
- 水道事業(簡易水道、下水道などを除く)、工業用水道事業、鉄道事業(地下鉄など)、自動車運送業(バス事業)など、軌道事業、電気事業、ガス事業(公営の電気ガス)、病院事業(自治体病院)、その他政令で定める事業
- 社会福祉事業。自治体が設置する保育所や介護施設が対象となります。
- 公共的な施設。公営施設の場合、総務省答弁では教育委員会所管施設の図書館や美術館などは、現段階では対象としていません。(但し、国会での政府答弁で5年後見直しでは対象となる可能性も)。また、市民会館や町民会館なども対象としていないとしています。
- しかし、地方自治法の一部改正による公的施設の株式会社委託門戸開放で、儲かる公的施設は株式会社、儲からない施設は独立行政法人とする可能性もあります。
Q 法人にはどんな種類があるのですか?
A 法人は、「特定地方独立行政法人」と「一般地方独立行政法人」とに分類されます。 「特定地方独立行政法人」は、公務員型といわれるもので、その法人の職員は公務員の身分を引き続き持ちます。一方、「一般地方独立行政法人」は、非公務員型といわれるもので、そこの職員は公務員の身分ではなくなります(剥奪されます)。
Q 「一般地方独立行政法人」は非公務員型といわれますが、現在の自治体職員が強制的に移行されるのですか?
A これも「会社分割法」の自治体版、究極のリストラ法といわれるゆえんで、「特定」「一般」問わず、条例により「法人」が設立された日をもって、「特別の辞令が発せられない限り」(同法59条)、法人の職員となると規定されています。 とりわけ、「非公務員型」の場合は、法人の職員となることは公務員でなくなることになります。これは、公務員の身分喪失は、懲戒・分限処分に限るとしている地公法の規定に反するものであり、また、使用者の一方的譲渡が出来ない民間と比べて著しい不利で不当な内容となっています。この根底には、公務員労働者の労働基本権否定とも関連する人事における「任用」制度という考えがあると言えます。(民間は労働契約)
Q 「公務員型」「非公務員型」とは、どう違うのですか?
A 整理をすれば以下の表のようになります。 「公務員型」の場合では、地公法24条の規定(公務員の賃金の物差しを規定)にはない中期計画による人件費見積もりも基準とされ、業績を理由とした賃下げも可能な規定となっています。 「非公務員型」では、地公法の規定は何もなく、「業務実績」のみが基準とされ、生計費も民間の水準も何もない「実績」のみで、賃金を決めることができることとなっています。 さらに、労働組合の性格が構成員によって一方的に決められたり、解散させることができるなど憲法28条の団結権、ILO87号条約の結社の自由を侵す内容となっています。
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公務員型(特定地方独立行政法人) |
非公務員型(一般地方独立行政法人) |
身分 |
身分は地方公務員 移行を拒否すれば「免職」も |
公務員でない法人職員 法人が解散すれば解雇も |
賃金・ 労働条件 |
賃金は職務と責任の度合いに応じて、かつ能率の考慮。(51条) ・給与基準は、同一又は類似の国及び他の自治体職員、他の独法職員並びに民間事業従事者の給与、当該独法の業務の業績、中期計画の人件費の見積もり等を考慮して決定。 ・労働条件の基準は、国及び自治体職員の条件などを考慮。(52条) |
・賃金は、勤務成績が考慮されるもの。(57条) ・給与基準は、法人の事業の実績を考慮し、かつ、社会一般の情勢に適合したもの。(57条) |
労働組合 の性格 |
・地公企労法適用(職員の半数が法人職員の場合) |
・労組法適用(民間と同じ) ・法人である労働組合は60日以内に労働委員会に登録(しない場合は解散) |
Q 「公務員型」「非公務員型」は、どうやって決められるのですか?
A 政府は、判断基準で一定のものを示すとしていますが、一つの業務は一つの形態だけでなく両者もあるとしています。(同じ公立病院でも公務員型もあれば非公務員型も) 選択の判断は、設置団体(自治体)にあります。但し、大学は選択の余地はなく、国立大学と同様に、全て「非公務員型」と規定されています。
Q 地方独立行政法人の運営はどうしておこなうのですか?
A 理事長は、設置団体の長(首長)が任命(議会の同意はいらない)、副理事長、理事は理事長が任命することとなっています。(これも議会の関与はなし) 運営については、「中期目標(3年~5年、但し大学は6年)」を定め、それに基づく「中期計画」や「年度計画」を定め事業を実施するとしています。 そして、公営企業型地方独立行政法人には、ことさら企業会計原則が強調され、独立採算制が強く求められており、サービスの後退、人件費圧縮を強いるものとなっています。 また、事業運営の評価は、首長が任命する「評価委員会」で「住民不在・職員不在」で評価する仕組みとなっています。
Q この法律が「地方自治を歪める」という問題点はなんですか?
A 大きな問題点は4つあります。
- 公的責任をあいまいにし、採算優先で住民サービスを切り捨て・後退のおそれ
同法3条では、「地方独立行政法人は、~公共性の見地から確実に実施されることが必要なものであることにかんがみ、適正かつ効率的にその業務を運営するよう努めなければならない」としていますが、その目的は「中期目標」の設定や、「効率最優先」となっており、「効率」だけでははかれない公共性が大きく後退する恐れがあります。
- 議会の関与・チェックを後退させ、団体自治を形骸化させるおそれ
地方独立行政法人は、理事長などは首長の任命となり、人事に対する議会の関与が排除され、また、運営に対する関与も3年から5年の「中期目標」や利用料の上限の認可や、解散などに限定されます。 「公共性の見地から確実に実施」されなければならない業務にもかかわらず、議会の関与が大きく後退することは「団体自治」を旨とする「地方自治の本旨」を歪める恐れがあります。
- 情報公開や住民監査などが保障されず、住民自治・住民参加が大きく後退するおそれ
情報の開示は努力規定であり、住民監査請求も規定されておらず、「密室」で首長・理事長が「何でも好き放題できる」ものになりかねません。 この事は、過去の「第3セクター」の乱脈経営の失敗でも証明されています。 こうした住民不在の「経営」は、新たな癒着・利権構造の温床となりかねず、自治体の公共性・公平性・安定性を損なう恐れがあります。
- 4番目の問題は、前述した職員の身分や賃金・労働条件について重大な問題点を持っていることです。
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