|
|
(1)国民の立場から、「市場化テスト」の法制化に反対し、自治体での実施を許さない運動を |
これまでみてきたように、「市場化テスト法案」は第1に、国民の生命とくらし、権利を保障する公務・公共サービスを民間企業等の儲け本位に変質させ、解体させるものです。法案では、公務・公共領域の市場化を推進するために、国や自治体が市場化テストの対象業務に選定し、実施する際には民間企業等の意見を直接聴くことを義務付けるとともに、財界・大企業の利益を代表した「官民競争入札等監理委員会」を設置し、基本方針の立案、実施要綱の策定に直接関与し、その後の実施状況を監視する権限までにいたるまで強力な権限を付与しています。
第2の問題は、地方自治の原則を踏みにじり、自治体業務の民営化、市場化テスト導入を事実上、強要していることです。しかも市場化テストによって受託する事業者は、迷上、全国展開する大企業等に限られ、地元中小零細業者等ははじき飛ばされるおそれが強い仕組みになっています。その結果、自治体財政は大企業によって吸い上げられ、地域経済をいっそう疲弊させることにつながります。しかも巨額の利権にまつわる談合・癒着の温床となる恐れがあります。
第3の問題は、「特定公共サービス」を民間企業等にゆだねることにともない、膨大な個人情報が遺漏、目的外使用の危機にさらされることです。今回特定公共サービスに選定された住民票の写しや納税証明の交付等にかかわる窓口業務、国民年金等にかかわる業務は、全国ネットワーク化された住民情報、そして所得や家族関係を直接知る立場に民間企業等をおくことになります。これらの情報は、いったん流出すると原状回復できない性質を持っており、かつ生命や財産を危機にさらす犯罪に直結することは、これまでも指摘されているとおりです。
第4に、民間企業等の競争的算入によって、人件費削減が競いあわれ、公務・公共サービスを担っている労働者の労働条件が悪化し、派遣、パートなどの非正規労働者に置き換わり、雇用不安がひろがるだけでなく、正規にあっては分限免職、非正規にあっては雇い止めによる解雇が歯止めなく発生する恐れがあります。
これらの問題をみるならば、「市場化テスト法案」は廃案にすべきであり、かつ自治体業務への適用もおこなうべきではありません。また同法案が成立したとしても、それぞれの自治体が導入すべきではないと考えます。
自治労連は、この「市場化テスト法案」を廃案に追い込む運動、自治体業務を対象にさせない取り組み、それぞれの自治体での導入を許さない取り組みを、すべての国民と労働者に関わる問題として位置づけ、全労連「もうひとつの日本・闘争本部」とともに、小泉内閣の「小さな政府」論とたたかうシンポジウムや宣伝、地域総行動、全国縦断キャラバンなどの国民運動を、職場と地域を基礎に積極的に推進するものです。
|
|
(2)「指定管理者制度」をめぐるたたかいの経験を活かして |
自治労連は、これまでもPFIや地方独立行政法人、指定管理者制度など「規制緩和・民間開放」に対して、その制度化に反対するとともに、制度化された後も、住民のくらしと権利を守る自治体の責任を後退させない取り組みと、正規・非正規の自治体労働者の雇用・労働条件を守り、組織化をすすめる取り組みを一体のものとして追求してきました。
とりわけ自治体が設置する住民のための「公の施設」に適用される「指定管理者制度」に対しては、利用者、住民と関係する自治体労働者が共同し、福ボ設や保育所、体育館、図書館、動物公園などのそれぞれの施設の役割、公共性・専門性・継続性の意義を深め、議会や住民、利用者に理解を広げ、民間企業等の競争的参入を規制し、実績のある非営利の公共的団体などを指定させ、あるいは指定管理者制度を導入しても、それまで当該施設で働いていた労働者を労働組合に組織し、正規労働者だけでなく無権利状態の非正規労働者の雇用も守らせることなど、数多くの実績を創り出してきました。
公務・公共サービスを縮小し、かつもうけ本位に変質させ、国民の安全と安心を根柢から揺るがす市場化テストの法制化を許さず、憲法を生かして国民のくらしと権利を守る公務・公共サービスの拡充をめざす取り組みがきわめて重要になっています。
|
|
(3)「小さな政府」とのたたかいを職場と地域から |
「市場化テスト法案」が閣議決定を経て国会提案され、今国会での成立が図られているもとで、当面、次の取り組みを展開します。
第1に、このパンフレット「市場化テスト法どこが問題か、どうたたかうか」をすべての自治体職場に届け、学習会を開きましょう。公務・公共業務に従魔キるすべての自治体(関連)労働者にも働きかけ、労働組合に入ってともにたたかうことを呼びかけましょう。「市場化テスト法案」の特徴や問題を自治体関係者や住民各層に広く早く知らせましょう。住民票の写し等の交付にかかわる窓口業務が市場化テストの対象とされているもとで、住民諸団体とのシンポジウムを開催しましょう。
第2に、今通常国会での成立が図られているもとで、審議、採決の山場に向けて、国会内と連携した国会を包囲する運動を展開しましょう。憲法改悪のための国民投票法案、教育基本法の改悪、行政改革推進法案や医療制度改革関連法案などを許さないたたかいと結合させ、春闘期に行われる国会行動、中央行動などのなかで、国会議員や政党への要請行動を展開しましょう。
第3に、地域を基礎に、幅広い自治体関係者との対話と共同をすすめましょう。2月の地域総行動やそれぞれの地域で実施する自治体キャラバン行動などの中で、自治体首長との懇談、2-3月議会での意見書採択を要請し、地域から国に向けた世論づくりに取り組みましょう。
第4に、自治体への導入を許さない取り組みを強化しましょう。国以上に民営化を進めようとする自治体を梃子にして、規制緩和、行政水準の引き下げを全国の自治体に適用させる仕組みをもっています。市場化テストの「先進自治体」といわれる自治体での取り組みを強化するとともに、自治体業務への適用を許さない取り組みをそれぞれの地域・自治体ですすめましょう。
第5に、「規制緩和・民間開放」によって、国民の生命や財産、諸権利が脅かされ、政官財の癒着・腐敗問題が発生しているもとで、この「官から民へ」がもたらしている様々な問題を明らかにし、告発する運動を展開しましょう。
|
|
← 特徴と問題 (7)公務員、、、 | 市場化テストについて トップへ戻る→