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特徴と問題 (4)自治体にも「市場化テスト」を押しつける仕組み

 

(4)自治体にも「市場化テスト」を押し付ける仕組み
 自治体業務も「市場化テスト法案」の対象であることは(2)で述べたとおりです。しかし国及び独立行政法人への適用と、自治体への適用とは、その手順が異なります。そのうえで、自治体にも「市場化テスト」を押し付ける仕組みを設けています。
<市場化テストを適用する仕組みは国と自治体とは異なる>
 国及び独立行政法人の場合は、国(内閣総理大臣)が基本方針において市場化テストの対象とすることを決定すると、対象業務を所管する国の行政機関等の長は「遅滞なく」実施要領を定め、実施に移さなければなりません(第9条1項ほか)。しかし自治体業務の場合は、市場化テスト法案の制定と改正によって「特定公共サービス」に指定し、民間企業が参入しやすいように規制緩和の特例措置を設けることにとどまり、個々の自治体が市場化テスト法案を適用して市場化テストを実施するかどうかはそれぞれの自治体の判断に委ねられています。

 自治体が「特定公共サービス」に市場化テストを適用する場合、自治体の長が、あらかじめ民間企業等の意見を聴いて、市場化テストの実施に関する方針(実施方針)を作成し(第8条1項、3項)、審議会又は合議制の機関の議を経て、業務ごとに実施要領を定め(第16条1項、同5項、第18条1項、同5項)、実施後、議会の議決を経て、民間企業等との間で契約が締結されることになります(第34条3項)。

<国が自治体に押し付ける仕組み>
 しかし自治体がまったく自主的自律的に判断できる保証はありません。
 第1に、市場化テストを、それぞれの自治体の都合にあわせて実施する裁量権は狭められています。市場化テスト法案には「自治体の責務」について次のように規定しています。
(地方公共団体の責務)
第5条 地方公共団体は、基本理念にのっとり、地方公共団体の特定公共サービスに関し見直しを行い、官民競争入札または民間競争入札を実施する場合には、その対象とする特定行政サービスを適切に選定するほか、地方公共団体の関与その他の規制を必要最小限のものにすることにより、民間事業者の創意と工夫がその実施する特定公共サービスに適切に反映されるよう措置するとともに、当該特定公共サービスの適性かつ確タな実施を確保するために必要かつ適切な監督を行うものとする。
 ここでは、いったん国が特定公共サービスに選定すれば、自治体は見直しを行うことが求められ、かつ自治体の業務でありながら「自治体の関与その他の規制を必要最小限のもの」「民間事業者の創意と工夫を反映」という基準の適用を求められています。

 「公の施設」に対する指定管理メ制度の適用においては、施設の公共性、専門性、継続性をふまえ、民間企業等の競争的参入を規制し、実績のある非営利の公共的団体などを公募によらずに指名するなど、住民・利用メの声に耳を傾けた対応をおこなった自治体が数多く生まれました。しかし財界・大企業の利益代表者にとっては、このような「制限」が気に入らず、「選定プロセスの透明性が低い事例も見受けられる」(「第2次答申」)などと悪罵を投げつけ、市場化テストによって根こそぎ財界・大企業に都合がよいルールを押し付けようとしています。

 第2に、事実上の強要が行われるということです。これまでもPFIや民営化(指定管理者制度等)、新地方行革指針・集中改革プランなどにおいて、国が自治体に対して「技術的助言」や補助金等での「裁量権」を使って押し付けてきました。

 竹中総務相は、2005年12月26日付けで、すべての市町村長等に宛てて「市場化テストにつきましても、改革のあらたなツールとして積極的な活用をご検討頂きたい」という書簡を送り付け、さらに2006年1月に開催した全国都道府県総務部長会議では「行革努力を交付税算定に反映するため、平成17年度から行革インセンティブ算定を導入したが、今回、行革努力の実績を地域振興関係経費に反映する算定を新設し、算入額を概ね倍増する」旨を明言しています。

 自治体は、地方自治の本旨(住民自治、団体自治)に則り、「住民の福祉の増進を図ることを基本として、地域における行政を自主的かつ総合的に実施する役割を広く担う」(地方自治法第2条)を責務としているのであり、そのやり方を国が指示することは、地方自治の本旨を蹂躙するものです。


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